日米の景気循環の比較 第10回 日本の景気後退の原因

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前回は、日米の公定歩合の推移と景気後退の関係を調べました。その結果、日本の金融政策は、景気循環の先行指標として利用することが難しいことが分かりました。

今回から、日本の景気循環の先行指標として、何が適当であるかを探って行きたいと思います。

1.戦後の日本の景気後退の一覧

以下に、戦後の日本の景気後退(期間、原因、米国の不況との同時性の有無)を一覧にします。


No.期間原因米国の不況との同時性
11951年7月~1951年10月朝鮮戦争特需の消失無し
21954年2月~1954年11月米国の軍需の消失有り
31957年7月~1958年6月外貨不足有り
41962年1月~1962年10月外貨不足無し
51964年11月~1965年10月公共投資拡大の反動無し
61970年8月~1971年12月金融引き締め有り
71973年12月~1975年3月金融引き締め、円高有り
81977年2月~1977年10月円高無し
91980年3月~1982年2月石油危機、金融引き締め有り
101985年7月~1986年11月円高無し
111991年3月~1993年10月不動産バブル崩壊無し
121997年6月~1999年1月アジア危機、金融危機無し
132000年12月~2002年1月ITバブル崩壊有り
142008年3月~2009年3月米住宅バブル崩壊有り

2.再発生する可能性のある景気後退

上の一覧の原因から、今後、再度、発生する可能性のある景気後退を列挙すると以下のようになります。

(1)No.1 と No.2 の軍需消失は、当面、発生する可能性が低いので、除外します。

(2)No.3 と No.4 の外貨不足は、世界第二位の外貨準備を持っている現在の日本では、起こりえないので、これも、除外します。

(3)No.5 の公共投資の拡大の反動は、既に、インフラが整備されている現代の日本では、起こりえないので、これも、除外します。


No.期間原因米国の不況との同時性
61970年8月~1971年12月金融引き締め有り
71973年12月~1975年3月金融引き締め、円高有り
81977年2月~1977年10月円高無し
91980年3月~1982年2月石油危機、金融引き締め有り
101985年7月~1986年11月円高無し
111991年3月~1993年10月不動産バブル崩壊無し
121997年6月~1999年1月アジア危機、金融危機無し
132000年12月~2002年1月ITバブル崩壊有り
142008年3月~2009年3月米住宅バブル崩壊有り

3.米国の景気後退に連動して日本が景気後退に陥る確率

上の最初のチャートは、1950年代から直近までの、日米の景気後退期間を比較したものです。

米国の9回の景気後退期間中に、日本が景気後退に陥らなかったのは、1960年5月~1961年2月の米国の景気後退だけでした。

従って、米国が景気後退に陥ると、88.8%の確率で、日本が景気後退に陥ると言えます。

世界的な経済の連動性が高まっている現代では、それ以上の確率で、米国に連動して、日本が景気後退に陥ると考えられます。

4.考察対象の景気後退

2.の一覧から、米国の景気後退と同時性が有るものを除外すると、以下の景気後退が残ります。

注)
米国の景気後退と同時性が有るものは、イールドカーブや住宅関連などの米国の先行指標を使って、日本の景気後退を予測可能であったとみなします。

No.期間原因米国の不況との同時性
81977年2月~1977年10月円高無し
101985年7月~1986年11月円高無し
111991年3月~1993年10月不動産バブル崩壊無し
121997年6月~1999年1月アジア危機、金融危機無し

これらの景気後退の先行指標が見つかれば、米国の先行指標と組み合わせて、日本の景気後退を予測出来ると考えられます。

次回からは、この四回の景気後退について、先行指標の有無を探っていきます。