日米の景気循環の比較 第9回 公定歩合と景気後退

今回は、日本と米国の景気循環を分析するシリーズの9回目として、1950年代から2000年代までの両国の景気後退と公定歩合の関係を分析してみます。
 
1.米国の公定歩合と景気後退の関係
 
下のチャートは、1950年から2013年までの米国の公定歩合の推移と景気後退期の関係を示したものです。
 
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殆どの景気後退の前に、公定歩合の引き上げが行われています。
すなわち、FRBの金融引き締めが、景気を減速させて、最終的に景気後退に至っていると言えます。
 
従って、米国の場合、政策金利の動向が景気後退の重要な先行指標となります。
 
2.日本の公定歩合と景気後退の関係
 
下のチャートは、1950年から2013年までの日本の公定歩合の推移と景気後退期の関係を示したものです。
 
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米国と比べて、景気後退の直前に公定歩合が引き上げられているケースは、少なくなっています。
 
日本では、為替や海外景気などの外部要因で、景気後退入りすることが多いため、景気後退の先行指標としての政策金利の重要性が低いと言えます。
 
3. 日本の個別の景気後退と利上げの関係
 
景気後退入りするまでに、連続して、1%以上の利上げがあった場合を、○。
連続して、1%以上の利上げが無いまま、景気後退入りした場合を、×とすると以下のようになります。
但し、景気後退入の前に、利下げが行われた場合は、×としました。
 
1951年7月~1951年10月・・・○
1954年2月~1954年11月・・・×
1957年7月~1958年6月・・・○
1962年1月~1962年10月・・・×
1964年11月~1965年10月・・・×
1970年8月~1971年12月・・・×
1973年12月~1975年3月・・・○
1977年2月~1977年10月・・・×
1980年3月~1982年2月・・・○
1985年7月~1986年11月・・・×
1991年3月~1993年10月・・・○
1997年6月~1999年1月・・・×
2000年12月~2002年1月・・・×
2008年1月~2009年6月・・・×
 
全部で、14回の景気後退のうち、日銀が適切な利上げによって、景気後退に導いた回数(○印)は、5回ですから、成功率は、35.7%ということになります。
 
4.米国の個別の景気後退と利上げの関係
 
日本と同様の方法で、米国の景気後退をカウントしてみます。
 
1953年8月~1954年5月・・・○
1957年9月~1958年4月・・・○
1960年5月~1961年2月・・・○
1969年12月~1970年11月・・・×
1973年12月~1975年3月・・・○
1980年2月~1980年7月・・・○
1981年8月~1982年11月・・・○
1990年8月~1991年3月・・・○
2001年4月~2001年11月・・・×
2008年1月~2009年6月・・・×
全部で、10回の景気後退のうち、FRBが適切な利上げによって、景気後退に導いた回数(○印)は、7回ですから、成功率は、70.0%ということになります。
 
5.まとめ
 
FRBの成功率が高いのは、覇権国である米国は、日本のように、景気が外部要因に左右されたり、中央銀行がインフレの亢進を気にして慎重になる必要性が少なく、大胆な金融政策を早期に打てるからだと言えます。
 
それでは、日本では、景気循環を予測するために、政策金利以外に、何を見る必要があるのでしょうか。
次回は、もう、一度、日本の過去の景気後退を振り返って、考えていくことにします。