国債市場に黒船は来るのか

一ヶ月ほど前の日経新聞夕刊の十字路で、JPモルガン証券の菅野雅明さんが、日本国債の価格下落(長期金利の上昇)のリスクを取り上げていました。

中長期的に重要な視点なので、以下に全文を引用します。

●引用開始

 ギリシャ問題に端を発した欧州金融危機は政策当局の対応で最悪の事態を何とか回避できたが、国債利回りギリシャなどで高止まる一方、日本国債は巨額の財政赤字にもかかわらず低下した。

 日本の財政赤字長期金利上昇に結びつかないのは「民間部門の大幅な貯蓄」「マイルドなデフレ」「日本の投資家のホーム・バイアス(円資産に対する選好)」があるからだ。財政赤字が拡大する一方、巨額の民間部門の貯蓄がデフレの下で実質金利の高い銀行預金に流入。貸し出しが減少中の銀行は国債を購入するので、資金が国債に還流する。

 こうした資金の流れはいつまで続くのか。国内の貯蓄が増加し続けるとは考え難い。高齢化の影響で家計貯蓄率は低下の一途をたどる一方、余裕資金を積み上げている企業部門もやがて設備投資や人件費を増やす結果、資金余剰は減少しよう。すなわち、財政赤字が拡大する中で民間部門の資金余剰が減少すれば、いずれ財政赤字が民間部門の資金余剰を上回ることになる。

 財政赤字ファイナンスを外国人投資家に本格的に依存し始める時が黒船来航だ。国債市場はそれまでの鎖国状態が終わり新しい局面を迎える。外国人投資家が考える日本国債の信用リスクは国内投資家に比べて大きいので、国債の利回りは本格的に上昇し始めるだろう。この時までに市場が納得する財政再建計画を政府が示さない限り、国内投資家も外貨資産の選好を強め資本逃避が起きないとも限らない。

 長期金利の上昇を回避すべく日銀が国債購入を増額ないし国債引き受けを始めると、財政規律の一段の低下の思惑から長期金利はさらに上昇しかねない。日銀の財政赤字ファイナンスが本格化すれば簡単にインフレになるが、その時はインフレが制御困難となり、高インフレと円安が日本の新たな問題となってくるであろう。3~5年後に黒船来航があってもおかしくない。(日経新聞

●引用終了

菅野さんが、3~5年後の黒船来航と言っているのは、現在の景気拡大のピークが、3~5年後になると予測しているからです。

景気拡大によって、長期金利が上昇する中で、さらに、財政悪化懸念が加わると、金利上昇に拍車がかかる危険性があります。

私は、2011年からの団塊世代の完全引退も、かなり、国債市場に大きな影響を与えるのでは無いかと思っています。