国債増発と市場の役割

JPモルガン証券の菅野雅明さんが、日本国債の増発に関して、コメントしています。

●引用開始
・・・日本の場合は国債債務不履行になる可能性は極めて小さい。

それは「国内貯蓄が豊富である」「デフレ下では政府が紙幣を印刷することで債務不履行は回避できる」「投資化のホームバイアス(自国選好)が強い」「世界最大の純債権国である」ことなどによるもので、財政プレミアムの拡大には限界がある。

 一方、長期金利の低下は利払い費を抑制するので、政府の財政赤字対策の優先順位が低くなる傾向がある。増発された国債も民間資金需要が弱い状況下、銀行が競って購入し安定消化が可能となる。

 しかし、公的部門への依存が過度に高まる社会はいずれ限界に直面するだろう。筆者は経常収支赤字化、インフレ期待の高まり、国民の政府に対する信頼感の低下がきっかけで「市場の反乱」が起き、長期金利が急騰する可能性がいずれ高まると感じている。将来、可能性が高い直接税増税は、開放経済化では資本や有能な人材の海外流出を通じさらに税収を減らしかねない。米国の消費バブルを勘案すると、「日本の国債バブル崩壊」も日本の金融危機が引き金になるのだろうか。(日経夕刊 十字路より一部抜粋)
●引用終了

現状、派遣労働に対する規制強化のような、大衆迎合的な政策が打ち出されている政治状況を見ると、直接税の増税をきっかけとした資本と人材の流失、債券価格の下落と金融危機の発生は、有りうるストーリーだと思います。

インフレ期待の高まりについては、以前に記事化した、やはり、菅野氏の「21世紀型通貨危機のかたち」を参照してください。
http://blogs.yahoo.co.jp/yada7215/51884361.html

菅野氏は、日本のエコノミストにしては、珍しく大きなテーマを、明解なストーリーで論じてくれるので、頭の整理に役立たせてもらっています。