商品循環 第15回 石油危機と商品循環の関係

【直近の履歴】
第14回 1950年から1980年の原油価格
第13回 1900年から1947年の原油価格
第12回 1859年から1899年の原油価格

今回は、商品循環のボトムを調べる予定を変更し、過去3回の結果を分析して、石油危機と商品循環の関係を検討することにしました。

1.1920年から1980年に発生した石油危機

PPIのデータが残っている1920年以降、1980年までに発生した石油危機は以下の6回でした。

1920年5月 西海岸ガソリン不足
1947年9月 ミシガン、オハイオ等でガソリン不足
1951年7月 イラン・アンバーダーン危機
1956年7月 スエズ危機
1973年10月 第三次中東戦争
1980年9月 イラン・イラク戦争

2.石油危機発生と商品価格高騰の関係

各々の石油危機が発生した月におけるPPI前年同月比を調べると以下の通りです。

1920年5月 西海岸ガソリン不足・・・23.61%
1947年9月 ミシガン、オハイオ等でガソリン不足・・・21.96%
1951年7月 イラン・アンバーダーン危機・・・10.99%
1956年7月 スエズ危機・・・3.38%
1973年10月 第三次中東戦争・・・15.46%
1980年9月 イラン・イラク戦争・・・13.35%

1956年7月のスエズ危機を除いて、1920年以降の6回の石油危機のうち、5回で危機が発生した月のPPIの前年同月比が既に10%を超えて、商品価格が高騰していました。

それでは、PPIの前年同月比が15%を超えてから、何ヶ月後に、石油危機が発生したかを調べると以下のとおりです。

1920年5月 西海岸ガソリン不足・・・4ヵ月後
1947年9月 ミシガン、オハイオ等でガソリン不足・・・8ヶ月後
1951年7月 イラン・アンバーダーン危機・・・6ヵ月後
1956年7月 スエズ危機・・・前後に15%超えの時期無し
1973年10月 第三次中東戦争・・・2ヵ月後
1980年9月 イラン・イラク戦争・・・8ヶ月後

このように、この期間では、石油危機が商品価格の高騰に先行した事実は無く、逆に、スエズ危機を除いて、先に商品価格が高騰して、その8ヶ月以内に石油危機が発生しました。

商品価格の高騰は、ガソリン不足や軍事紛争といった石油危機の原因となり、さらには、政治家が紛争を起こす動機になる可能性が高いと結論付けられます。

また、1950年代以前の石油危機は、ガソリン不足などの単なる供給不足だったのに対して、1950年代以降の石油危機は、全て中東での軍事的な紛争にエスカレートしている点も興味深いです。

3.商品循環のピークと石油危機発生との関係

商品循環のピークと石油危機発生の時期の前後関係は以下のとおりです。

1920年4月・・・1ヵ月後に石油危機(西海岸ガソリン不足)が発生
1947年2月(1回目ピーク)・・・7ヵ月後に石油危機(ミシガン、オハイオ等でガソリン不足)が発生
1951年1月(2回目ピーク)・・・6ヵ月後に石油危機(イラン・アンバーダーン危機)が発生
1980年10月・・・1ヵ月前に石油危機(イラン・イラク戦争)が発生

このように、過去4回の商品循環のピークの1ヶ月前から7ヵ月後の間に、石油危機が発生しています。

今後も、商品循環のピークでは、何らかの石油危機が発生する可能性が高いと思います。

次回は、延び延びとなっていた商品循環のボトムの探し方を検討してみようと思います。