日米の景気循環の比較 第14回 1997年の景気後退の詳細分析

1.前回のまとめ
 
前回は、1991年の景気後退について、住宅用不動産への資金流入がダブルピークを形成した過程を分析し、景気後退や株価の先行指標としての新規住宅貸付額の有効性を評価しました。
 
今回は、1997年の景気後退について、同様の分析を行ってみます。
 
2.1997年の景気後退・・・消費税増税後(3%から5%へ)
 
(1) 新規住宅資金貸付額の推移
 
1997年の景気後退時の前後において、新規住宅資金貸付額(4四半期移動平均)は、以下のように、1回のピークを形成して、推移していました。
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【主なポイント】
四半期 新規住宅貸付額
1993年3Q 17124.25 ・・・直前のボトム
1996年2Q 45507 ・・・ピーク
ボトムからピークまでの新規住宅貸付額の伸び率・・・ 265.7%
 
以上のように、ボトムとピークを比較すると、2.5倍前後の資金が住宅用不動産に流入していたことがわかります。
 
【予測精度】
景気後退入り・・・1997年2Q
ピーク・・・1996年2Q=景気後退入りの4四半期前
ピークの確認時期・・・1996年4Q=景気後退入りの2四半期前
 
以上のように、ピークを確認して、半年後に景気後退入りとなったわけです。
 
(2) 株価との比較
 
以下は、上と同じ期間(1993年3Qから1999年4Q)の新規住宅貸付額(4四半期移動平均)と日経平均株価の推移を重ね合わせたものです。
 
注)日経平均株価は各四半期の最終月の月初の始値です。
 
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このように、新規住宅貸付額と株価は、ほぼ、同じ時期にピークを付けていますが、新規住宅貸付額の伸びと比べて、株価の上昇率は鈍くなっています。
これは、この時期は、バブル崩壊から間もなく、依然として、資産価格に下落圧力がかかっており、資金の流入にも、反応し難かったからだと考えられます。
 
【1997年の主なポイント】
新規住宅貸付額のピーク・・・1996年2Q
ピークの確認時期・・・1996年4Q
ピークの確認時期の日経平均株価・・・21034.94
日経平均株価のピーク・・・1996年2Q、21970.56
株価のピークとの比較・・・2Q後に95.7%の価格で売却可能
 
以上のように、新規住宅貸付額のピークを確認して、日経平均を売却すれば、株価のピーク(1996年2Q)よりは、2Qほど遅れますが、ピークに近い値で売却が可能だったということになります。
 
1991年の景気後退を振り返ると、やはり、株価のピークの2Q後の売却が可能だった言えます。
 
【1991年の主なポイント】
新規住宅貸付額のピーク・・・1989年4Q
ピークの確認時期・・・1990年2Q
ピークの確認時期の日経平均株価・・・32891.12
日経平均株価のピーク・・・1989年4Q、37132.68
株価のピークとの比較・・・2Q後に88.5%の価格で売却可能
 
3.まとめ
 
1991年と1997年の二回の景気後退を調べた結果は、以下のようにまとめられます。
 
(1)消費税の導入/増税に伴う駆け込み需要の高まりとその減退に起因して発生する日本単独の景気後退は、新規住宅貸付額を先行指標として、景気後退入りの2Q前の時点での予測が可能である。
 
(2)当該期間の株価に関しては、同じく新規住宅貸付額を先行指標とした場合、株価のピークの2Q後に、90%前後の価格で売却可能である。