商品循環 第66回 150年間の金価格と通貨体制の推移

【直近の履歴】
第65回 金本位制の問題点と商品循環の関係
第64回 1861年から1925年の金価格と金融政策の関係
第63回 19世紀後半の大不況を米国経済史から考察する

1. 1861年から1925年の金価格

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上のチャートのように、1861年から1919年の間は、金とドルとの交換レートが、ほぼ、固定化されており、この時期の大半で金本位制が敷かれていたと考えられます。

牛熊ゼミナール金融の歴史第34回 南北戦争後の投機と恐慌
によると、「1873年の「貨幣法」によって金本位制アメリカの通貨制度として定め、1879年に施行されました。この金本位制への移行が、その後の不況やデフレの要因とされ、金銀複本位制を求める運動も広まりました。」とあります。

金本位制を長期間、適用したことによって、低金利の環境でも、不況期に金融が緩和されず、その結果、デフレが長期化したことが、1873年から1896年の大不況の発生、ならびに、1890年における商品循環のピークが出現しなかった理由と考えられます。・・・大不況(Wikipedia)

また、1919年から1923年にかけて、大きく金価格が上昇しているのは、この時期に発生した第一次世界大戦の戦費調達のため、各国が、一時的に金本位制から離脱し、管理通貨制に移行していたことが、金価格に反映したものと考えられます。・・・金本位制(Wikipedia)

米国は、1919年に金本位制に復帰していますが、管理通貨制の間に、インフレが進んだ為に、通貨の価値が下落し、相対的に金価格が上昇したと考えられます。


2. 1925年から1955年の金価格

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上のチャートのように、1925年から1930年まで、金価格が一定でした。これは、第一次世界大戦後に、金本位制に復帰し、金とドル交換レートの固定化に成功したことが理由です。

しかし、1929年に始まった世界大恐慌によって、各国は、金本位制の維持が不可能になり、1937年6月のフランスを最後にすべての国が金本位制を離脱し、管理通貨制に移行しました。・・・世界恐慌(Wikipedia)

1931年から1935年にかけて、金価格が大きく変動し、最終的に、大きく金価格が上昇しているのは、管理通貨制に移行した間の通貨価値の下落によって、金価格が上昇したと考えられます。

1934年以降、金価格が35ドル近辺で安定していることから、この間に、金本位制に復帰したことが、推測されます。

この間に、第二次世界大戦(1939年~1945年)が勃発しますが、米国は、他国経済が戦禍で疲弊する中で、大きな経済的な被害を免れ、世界最大の金保有国となります。

1944年にブレトンウッズ協定が締結され、米ドルと金の交換レートが固定化されるとともに、他国の通貨は、米ドルとの為替を固定化して、その結果、米ドルを基軸通貨とした金本位制が敷かれる事になりました。・・・ブレトンウッズ協定(Wikipedia)

FRBは、1941年から1951年にかけて、戦費調達を目的とした米国債の引き受けを行い、マネタリーベースもほぼ二倍に拡大しました。

当時の米国は大量の金保有を背景に、金本位制の通貨体制下においても、通貨の大量発行が可能であったと考えられます。

3. 1955年から1985年の金価格

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上のチャートのように、1955年以降も、ブレトンウッズ体制が続き、金価格は、長期的に固定化されました。

しかし、ニクソン大統領が、1971年に、金とドルの交換停止を宣言して、突然、ブレトンウッズ体制が終了し、金価格が上昇を始めます。

第二次世界大戦後、日本やドイツなどが、安い通貨を利用して、米国へ工業製品を大量に輸出した結果、米国から金が大量に流出したことが、ブレトンウッズ体制を維持出来なくなった一因と言われています。

1971年以降、金の価格は、原油穀物と同様に、市場で決まるようになり、大きく変化するようになります。

1981年には、長期金利のピークによる商品循環のピークが、金価格においても、観測されました。

4. 1985年から2010年の金価格

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上のチャートのように、1981年にピークを打った金価格は、その後、他の商品と同様に、約20年間、低迷し、2000年代に入ると、再び、上昇に転じます。

これは、長期金利の低下で、FRBが長期的な金融緩和政策を実行し、さらに、リーマンショック後、量的緩和策を実行した結果、ベースマネーが2000年との比較で二倍以上に拡大したことが原因と考えられます。

5.まとめ

・1920年代、1930年代、1970年代のように、金本位制から管理通貨制に移行すると、金価格の上昇が観測される。
・1940年代のように、金の流出が無ければ、中央銀行金本位制を維持したまま、金融を緩和し、マネタリーベースを拡大することが可能であり、その結果、商品循環のピークが出現する。

6.参考文献・・・金本位制(Wikipedia)より

●不況レジームとしての国際金本位制(金の足かせ)

金本位制というのは、固定相場制の一種としてとらえることができる。各国がいったん自国通貨と金との交換比率を決定すると金平価も自動的に決定され、各国通貨当局は金平価を維持させるために、国内の金融政策が追随する形をとる。

金本位制はほかのドルペッグ制などとは違った固定相場制としての特質を持っている。それは金流出国と金流入国との間の金融政策の非対称性である。例えば、自国において金流出が起こったとする、その国では民間の兌換請求によって金を買い戻していることになるから、必然的に自国通貨のマネーサプライの減少をもたらし、均衡に至る。しかし、金流入国においては金流入によって民間より金を買い入れて、マネーサプライの拡大をすることになるが、当該国がマネーサプライの拡大を嫌った場合、他の資産を民間に売却することによって自国通貨供給の拡大を阻止するという操作が可能であり、このような金不胎化政策はかならず他の国に金融引き締めを強いることになるため、金本位制というのは本質的に強い引き締め圧力を持ち、拘束性を持つ政策レジームである。


次回は、三回の長期金利のボトムでの、通貨体制と商品循環の関係を整理してみたいと思います。