東北大学 海藻からのバイオエタノール生成について

東北大学大学院農学研究科 佐藤 実教授が、海藻からのバイオエタノール生成について、まとめられています。


バイオエタノールの問題点】

・非食料バイオマスとしては、雑草、稲ワラ、廃材木などのリグノセルロースバイオマスと、アオサ、マコンブやホンダワラなどの海藻がある。

・このうち、リグノセルロースバイオマスは、セルロースを覆い抽出の妨げになっているリグニンの除去、難分解性セルロースの糖化(高分子多糖類を低分子化、単糖化し微生物が利用しやすいようにすること)、使用する硫酸などの薬品の処理などが大きな壁になり、広がりがみられない。

・海藻は一部食料として利用されるものはあるが、ほとんどは食料としての利用はなく、エタノール原料としては手つかずのバイオマスといえ、近年、各方面で盛んに研究がなされている。

・海藻から再生可能なバイオ燃料エタノールを作ろうとする試みは古く、緑藻アオサからのエタノール製造に成功している。

・ただし、緑藻、褐藻、紅藻の大型海藻全体を見渡した場合、資源量はコンブやワカメ、ホンダワラなどが属する褐藻が圧倒的に多い。

・しかし褐藻は、残念ながら緑藻と異なり、炭水化物としてセルロース系多糖も含むが、マンニトール、ラミナラン、アルギン酸など、複雑な成分を含んでおり、エタノール発酵は困難とされ、実用化が遅れている。

東北大学東北電力(株)の取り組み】

発電所の取水口に集まる海藻は主に春はマコンブ、夏はホンダワラ、秋はアマモなどのように季節により変化する。集まった海藻はゴミであり、産業廃棄物として有償で引き取られ、処分されている。

・モデル海藻としてマコンブを用い、バイオエタノール製造技術の開発に着手した。

・前処理で多くのエネルギーを必要とする乾燥や微粉末化を省略したことでエネルギー収支を大幅に改善させた。

・複雑な海藻成分を複数の微生物を利用してエタノール発酵させた。

・この方法で、生マコンブ1kgから22gのエタノール製造を確認しており、試験管レベルながら高効率的なエタノール製造技術と言える

・今後は、マコンブからのエタノール発酵のスケールアップを図るとともに、再生可能エネルギー生産を推進するために、エタノール発酵に適した海藻の探索と養殖、より効率的な発酵微生物の探索や、培養条件、精製方法などの検討を進めることが必要と考える。