商品循環 第38回 CPIのインフレと長期金利の循環との関係

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第36回 商品の強気相場における株式と商品のパフォーマンス比較(1)
第35回 景気循環とインフレおよび投資パフォーマンスの関係
第34回 商品循環とCPIの関係を一般化する

1.前回のまとめ

前回の分析の結果、イールドカーブを利用することによって、CPIの長期的なインフレの期間中でも、特にショートポジションにおいて、株式投資で高いパフォーマンスを得られることが分かりました。

今回は、商品循環のピークに相当する、CPIの長期的なインフレと、コンドラチェフ循環と呼ばれる長期金利の循環との関係を調べてみようと思います。

2.仮定

前回のデータから、景気循環とその期間中のCPIについて、抜粋すると以下のように、それぞれの商品循環のピークで、CPIのインフレの形が異なることが分かります。

景気区分→期日→CPI→インフレ有無
△    1929年8月       
▼    1933年3月    -6.52%    デフレ
△    1937年5月    2.15%   
▼    1938年6月    1.96%   
△    1945年2月    3.22%   
▼    1945年10月    2.28%   
△    1948年11月    9.83%    インフレ・・・商品循環のピーク
▼    1949年10月    0.01%   
△    1953年7月    2.92%   
▼    1954年5月    0.89%   
△    1957年8月    1.05%   
▼    1958年4月    3.34%   
△    1960年4月    1.63%   
▼    1961年2月    1.46%   
△    1969年12月    2.44%   
▼    1970年11月    5.89%   
△    1973年11月    4.52%   
▼    1975年3月    10.74%    インフレ
△    1980年1月    8.04%    インフレ
▼    1980年7月    14.21%    インフレ・・・商品循環のピーク
△    1981年7月    11.57%    インフレ
▼    1982年11月    7.72%    インフレ
△    1990年7月    3.75%   
▼    1991年3月    5.68%   
△    2001年3月    2.77%   
▼    2001年11月    2.80%   
△    2007年12月    2.64%   
▼    2009年6月    2.46%   

△:景気の山
▼:景気の底
CPI:当該期間におけるCPI前年同月比の平均
デフレ:CPIがマイナスの場合
インフレ:CPIが7%以上の場合

上のように、1947年をピークとする商品循環では、インフレの期間が景気循環の1期間、約3年間であるのに対して、1980年をピークとする商品循環では、インフレの期間が景気循環の5期間、約9年間とかなり長くなっています。

また、1947年をピークとする商品循環では、インフレの期間は、景気拡大期のみだったのに対して、1980年をピークとする商品循環では、合計三回の景気後退期でも、インフレが続いていました。

これは、1947年におけるインフレの要因が商品価格の高騰のみだったのに対して、1980年では、その上に、長期金利の上昇による債券価格の下落という要因が加わったために、インフレが長期間に及んだと考えられます。

米国の長期金利は、コンドラチェフ循環と呼ばれる60年周期の循環構造を持つために、上の考え方が正しいとすると、1980年の60年前の1920年にも、複数の景気循環に渡る5年以上のインフレがあったと推測されます。

3.検証

CPIの最も古いデータである1910年代まで遡って、景気循環と対比させると以下のようになります。

景気区分→期日→CPI→インフレ有無
▼    1914年12月       
△    1918年8月    9.93%    インフレ
▼    1919年3月    18.26%    インフレ
△    1920年1月    15.27%    インフレ・・・商品循環のピーク
▼    1921年7月    6.36%   
△    1923年5月    -6.38%   
▼    1924年7月    1.91%   
△    1926年10月    1.44%   
▼    1927年11月    -1.73%   
△    1929年8月    -0.91%   
▼    1933年3月    -6.52%    デフレ
△    1937年5月    2.15%   
▼    1938年6月    1.96%   
△    1945年2月    3.22%   
▼    1945年10月    2.28%   
△    1948年11月    9.83%    インフレ・・・商品循環のピーク
▼    1949年10月    0.01%   
△    1953年7月    2.92%   
▼    1954年5月    0.89%   
△    1957年8月    1.05%   
▼    1958年4月    3.34%   
△    1960年4月    1.63%   
▼    1961年2月    1.46%   
△    1969年12月    2.44%   
▼    1970年11月    5.89%   
△    1973年11月    4.52%   
▼    1975年3月    10.74%    インフレ
△    1980年1月    8.04%    インフレ
▼    1980年7月    14.21%    インフレ・・・商品循環のピーク
△    1981年7月    11.57%    インフレ
▼    1982年11月    7.72%    インフレ
△    1990年7月    3.75%   
▼    1991年3月    5.68%   
△    2001年3月    2.77%   
▼    2001年11月    2.80%   
△    2007年12月    2.64%   
▼    2009年6月    2.46%   

上のように、1920年の商品循環のピークでは、CPIのインフレの期間が、景気循環の3期間、約5年と比較的に長期に渡っています。
また、1回の景気後退期でも、インフレが継続しており、非常に強いインフレ傾向があったことが分かります。

注)もし、1910年代以前のデータが得られれば、インフレの期間がさらに長期であった可能性もあります。

1920年には、長期金利が60年周期のピークにあって、債券が売られていたために、このように、インフレが長期に及んでいたと考えることが出来ます。

4.今後のインフレの予測

現在は、1980年にピークを付けた長期金利の30年後のボトムに相当するために、債券が長期的に売られる状況にはありません。
これまでのところ、商品価格が高騰しても、CPIの広範なインフレが発生しないのは、このためだと考えられます。

従って、今後、商品循環のピークに入って、CPIのインフレが観測されたとしても、その期間は、景気循環で1期間、約3年前後の短期間に留まるのではないかと予測しています。

次回は、これまで複数回にわたって分析してきた、CPIと商品循環の関係について、一旦、結果を整理しようと思います。