前回、フェデラルファンドレート(以下、FF金利)と、CPI、PPIをリンクしたデータを作成しました。
今回は、このデータを使って、1980年の商品循環のピークにおけるFF金利の推移と、CPI、PPIへの影響を調べることにします。
データは、以下からダウンロードが可能です。
PPI_CPI_FFrate
1.FF金利とCPI (1979年)
1970年代、米国では、ベトナム戦争による財政支出の増大で、インフレが常態化し、1979年3月には、CPIが10%を超える激しいインフレとなりました。
1979年8月にFRB議長に就任したポール・ボルカーは、インフレ退治を最大目標に強力な金融引締め政策を実行し、1979年末には、FF金利を13%台まで引き上げました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1979/1/1 10.07 9.28%
1979/2/1 10.06 9.86%
1979/3/1 10.09 10.09% ←CPIが10%を超える
1979/4/1 10.01 10.49%
1979/5/1 10.24 10.85%
1979/6/1 10.29 10.89%
1979/7/1 10.47 11.26%
1979/8/1 10.94 11.82% ←ボルカーがFRB議長に就任
1979/9/1 11.43 12.18%
1979/10/1 13.77 12.07%
1979/11/1 13.18 12.61%
1979/12/1 13.78 13.29% ←FF金利を13%台後半まで引き上げる
2.FF金利とCPI (1980年)
1980年に入っても、物価上昇は続いたため、FRBは、1980年3月には、FF金利を17%台まで引き上げました。
その結果、1980年6月には、CPIの伸び率が下がり始め、FF金利も、一旦、9%台まで引き下げられます。
しかし、依然として、CPIが10%を超えるインフレが続いていたために、FRBは、金融引締めが不十分と見て、FF金利の引き上げを断行して、1980年末には、FF金利が18%台後半に達しました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1980/1/1 13.82 13.91%
1980/2/1 14.13 14.18%
1980/3/1 17.19 14.76%
1980/4/1 17.61 14.73% ←FF金利を最大17.6%まで引き上げる
1980/5/1 10.98 14.41% ←CPIの伸び率が下がり始める
1980/6/1 9.47 14.38% ←FF金利を9%台に引き下げる
1980/7/1 9.03 13.13%
1980/8/1 9.61 12.87%
1980/9/1 10.87 12.60%
1980/10/1 12.81 12.77%
1980/11/1 15.85 12.65%
1980/12/1 18.90 12.52% ←FF金利を18%台まで引き上げる
3.FF金利とCPI (1981年)
1981年に入っても、FRBによる金融引締めは続けられ、6月には、FF金利が過去最大の19.1%まで引き上げられます。
この強力な金融引締めによって、CPIは、年末になって、やっと、10%を下回りはじめましたが、FRBは、引き締めのスタンスを継続し、12月のFF金利も、12%台を維持しました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1981/1/1 19.08 11.83%
1981/2/1 15.93 11.41%
1981/3/1 14.70 10.49%
1981/4/1 15.72 10.00%
1981/5/1 18.52 9.78%
1981/6/1 19.10 9.55% ←FF金利が過去最大の19.1%まで引き上げられる。
1981/7/1 19.04 10.76%
1981/8/1 17.82 10.80%
1981/9/1 15.87 10.95%
1981/10/1 15.08 10.14%
1981/11/1 13.31 9.59% ←CPIが10%を下回り始める。
1981/12/1 12.37 8.92% ←年末までFF金利の12%台を維持
4.FF金利とCPI (1982年)
FRBは、金融引締めを開始してから3年目の1982年に入っても、引き締めスタンスを維持し、9月まで、FF金利を10%台に据え置きました。
インフレは、やっと、沈静化の傾向を見せ、8月に入ると、CPIは、5%台まで下がってきました。
この時点で、FRBは、金融引き締め政策を終了し、10月には、FF金利を9%台に下げて、緩和を実施しました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1982/1/1 13.22 8.39%
1982/2/1 14.78 7.62%
1982/3/1 14.68 6.78%
1982/4/1 14.94 6.51%
1982/5/1 14.45 6.68%
1982/6/1 14.15 7.06%
1982/7/1 12.59 6.44%
1982/8/1 10.12 5.85% ←CPIが5%台まで下落
1982/9/1 10.31 5.04%
1982/10/1 9.71 5.14% ←金融緩和に政策転換し、FF金利を9%台に引き下げる。
1982/11/1 9.20 4.59%
1982/12/1 8.95 3.83%
今回は、このデータを使って、1980年の商品循環のピークにおけるFF金利の推移と、CPI、PPIへの影響を調べることにします。
データは、以下からダウンロードが可能です。
PPI_CPI_FFrate
1.FF金利とCPI (1979年)
1970年代、米国では、ベトナム戦争による財政支出の増大で、インフレが常態化し、1979年3月には、CPIが10%を超える激しいインフレとなりました。
1979年8月にFRB議長に就任したポール・ボルカーは、インフレ退治を最大目標に強力な金融引締め政策を実行し、1979年末には、FF金利を13%台まで引き上げました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1979/1/1 10.07 9.28%
1979/2/1 10.06 9.86%
1979/3/1 10.09 10.09% ←CPIが10%を超える
1979/4/1 10.01 10.49%
1979/5/1 10.24 10.85%
1979/6/1 10.29 10.89%
1979/7/1 10.47 11.26%
1979/8/1 10.94 11.82% ←ボルカーがFRB議長に就任
1979/9/1 11.43 12.18%
1979/10/1 13.77 12.07%
1979/11/1 13.18 12.61%
1979/12/1 13.78 13.29% ←FF金利を13%台後半まで引き上げる
2.FF金利とCPI (1980年)
1980年に入っても、物価上昇は続いたため、FRBは、1980年3月には、FF金利を17%台まで引き上げました。
その結果、1980年6月には、CPIの伸び率が下がり始め、FF金利も、一旦、9%台まで引き下げられます。
しかし、依然として、CPIが10%を超えるインフレが続いていたために、FRBは、金融引締めが不十分と見て、FF金利の引き上げを断行して、1980年末には、FF金利が18%台後半に達しました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1980/1/1 13.82 13.91%
1980/2/1 14.13 14.18%
1980/3/1 17.19 14.76%
1980/4/1 17.61 14.73% ←FF金利を最大17.6%まで引き上げる
1980/5/1 10.98 14.41% ←CPIの伸び率が下がり始める
1980/6/1 9.47 14.38% ←FF金利を9%台に引き下げる
1980/7/1 9.03 13.13%
1980/8/1 9.61 12.87%
1980/9/1 10.87 12.60%
1980/10/1 12.81 12.77%
1980/11/1 15.85 12.65%
1980/12/1 18.90 12.52% ←FF金利を18%台まで引き上げる
3.FF金利とCPI (1981年)
1981年に入っても、FRBによる金融引締めは続けられ、6月には、FF金利が過去最大の19.1%まで引き上げられます。
この強力な金融引締めによって、CPIは、年末になって、やっと、10%を下回りはじめましたが、FRBは、引き締めのスタンスを継続し、12月のFF金利も、12%台を維持しました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1981/1/1 19.08 11.83%
1981/2/1 15.93 11.41%
1981/3/1 14.70 10.49%
1981/4/1 15.72 10.00%
1981/5/1 18.52 9.78%
1981/6/1 19.10 9.55% ←FF金利が過去最大の19.1%まで引き上げられる。
1981/7/1 19.04 10.76%
1981/8/1 17.82 10.80%
1981/9/1 15.87 10.95%
1981/10/1 15.08 10.14%
1981/11/1 13.31 9.59% ←CPIが10%を下回り始める。
1981/12/1 12.37 8.92% ←年末までFF金利の12%台を維持
4.FF金利とCPI (1982年)
FRBは、金融引締めを開始してから3年目の1982年に入っても、引き締めスタンスを維持し、9月まで、FF金利を10%台に据え置きました。
インフレは、やっと、沈静化の傾向を見せ、8月に入ると、CPIは、5%台まで下がってきました。
この時点で、FRBは、金融引き締め政策を終了し、10月には、FF金利を9%台に下げて、緩和を実施しました。
年月→FF金利→CPI前年同月比
1982/1/1 13.22 8.39%
1982/2/1 14.78 7.62%
1982/3/1 14.68 6.78%
1982/4/1 14.94 6.51%
1982/5/1 14.45 6.68%
1982/6/1 14.15 7.06%
1982/7/1 12.59 6.44%
1982/8/1 10.12 5.85% ←CPIが5%台まで下落
1982/9/1 10.31 5.04%
1982/10/1 9.71 5.14% ←金融緩和に政策転換し、FF金利を9%台に引き下げる。
1982/11/1 9.20 4.59%
1982/12/1 8.95 3.83%
このように、1980年のような激しいインフレでは、政策金利(FF金利)を大胆に引き上げても、CPIが思うように下がらず、深刻な景気後退にも関わらず、何度も、金融当局は、FF金利の再引き上げに追い込まれます。
この期間中のFF金利の推移を見ると、FRBは、3回の金利引上げを行ったことが分かります。
▲1980年4月・・・17.61% ←FF金利の1回目のピーク
▼1980年7月・・・9.03%
▲1981年1月・・・19.08% ←FF金利の2回目のピーク
▼1981年3月・・・14.70%
▲1981年6月・・・19.10% ←FF金利の3回目のピーク(過去最大値)
5.FF金利とPPI (1980年)
次に、FF金利と商品価格を表すPPIとの関係を見てみます。
年月→FF金利→PPI前年同月比
1980/1/1 13.82 15.45%
1980/2/1 14.13 16.02%
1980/3/1 17.19 15.44% ←PPIのピーク
1980/4/1 17.61 14.17% ←FF金利の1回目のピーク
1980/5/1 10.98 13.94%
1980/6/1 9.47 13.72%
1980/7/1 9.03 14.02%
1980/8/1 9.61 14.95%
1980/9/1 10.87 13.35% ←金価格のピーク
1980/10/1 12.81 13.03%
1980/11/1 15.85 12.83% ←CRB指数のピーク
1980/12/1 18.90 12.47%
上のように、FF金利の1回目の引き上げ時点で、既に、PPIはピークアウトし、実際の商品価格も、1980年の年末には、ピークアウトして、下落に転じています。
1981年も引き続きPPIは下落し、7月には、10%を切っています。
このように、PPI(商品価格)のインフレは、政策金利(FF金利)の引き上げによって、CPIよりも容易に、沈静化に向かう傾向があると言えます。
6.長期金利との関係
ここで、PPIならびにFF金利と長期金利との関係を簡単に考察してみまます。
1980年3月・・・PPIのピークアウト(商品循環のピーク)
1981年6月・・・FF金利が過去最大値の9.10%に到達
1981年9月・・・米国の長期金利が、過去最大値の15.84%を付ける。(債券循環のボトム)
このように、FF金利と長期金利のピークは、3ヶ月の差しかなく、両者が密接な関係にあることが分かります。
以上の点を整理すると、以下のような商品循環と債券循環の関係が、仮定されます。
(1)商品循環がピークとなっても、CPIのインフレが継続するために、短期金利(政策金利)がピークアウトするまで、1年程度のタイムラグがある。
(2)短期金利がピークを打つと、三ヶ月程度の短い間に、長期金利がピークアウトし、債券循環のボトムを打つ。
(3)従って、商品循環のピークは、債券循環のボトムの1年程度の先行指標となりうる。
この仮定が正しいかどうは、次回以降に、1920年の商品循環のピークで検証してみることにします。
次回は、FF金利と景気循環の関係を整理してみようと思っています。