商品循環 第101回 商品価格指数(実質)を分析する

【直近の履歴】

前回は、1866年から2012年までの、実質価格での商品価格指数を取得しました。
今回は、この商品価格指数について、分析していきます。

1. 商品価格指数(実質)の推移

以下のチャートは、 1866年から2012年までの、実質価格での商品価格指数の推移です。

1920年、1980年、2011年に商品循環のピークが見られますが、1950年頃のピークは、チャート上に明瞭に表れていません。


2.ブレイクポイント

ブレイクポイントで数値的に分析してみると以下のとおりです。

年 商品価格指数
911 110.94 ・・・ボトム
1917 218.61 ・・・ピーク。ボトムから6年間で97%の上昇。
1931 77.98 ・・・ボトム
1947 227.67 ・・・ブレイクポイント
1950 240.12 ・・・ピーク。ボトムから19年間で208%の上昇。
1969 180.81 ・・・ボトム
1973 249.96 ・・・ブレイクポイント
1980 458.00 ・・・ピーク。ボトムから11年間で83%の上昇。
1998 187.75 ・・・ボトム
2006 475.59 ・・・ブレイクポイント
2011 739.55 ・・・ピーク。ボトムから13年間で294%の上昇

各商品循環における年平均の上昇率を求めると、以下のとおりです。

年 上昇率
1917 16.1% (=97%÷6年)
1950 10.9% (=208%÷19年)
1980 5.5% (=83%÷11年)
2011 22.2% (=294%÷13年)

【分析】
1917年の場合は、短期間に商品価格が上昇して、ピークを付けた後に、大幅に下落しています。これは、長期金利のピークアウトと同期した動きと考えられます。 (商品から債券への資金シフト)

1950年の場合、チャート上に、明確なピークが見られませんが、 長期間に渡って、ゆっくりした速度で上昇し、ピークを付けた後も、大幅な商品価格の下落は、見られませんでした。これは、長期金利が底入れから上昇に転じた影響と考えられます。
この期間中は、大恐慌後の株式の低迷の時期であり、長期金利も3%前後で推移したことから、商品は、相対的に有利な投資先であったと言えます。

1980年の場合は、1917年と同様に、短期間に上昇して、ピークを付けた後に、商品価格は大幅に下落しています。また、他の商品循環のピークと比べて、実質価格での上昇率は、小さくなっています。

2011年の場合は、1950年と同様に、長期間に渡って、商品価格は上昇しており、他の商品循環のピークと比べても、上昇率は、大きくなっています。長期金利も、1950年と同様に底入れすると考えられることから、ピークアウト後の大幅な商品価格の下落は、発生しない可能性があります。

3.エネルギー価格指数の分析

以下のチャートは、商品価格指数のサブセットであるエネルギー価格指数の1901年から2012年までの推移です。

イメージ 1

1920年、1980年、2007年にピークが見られますが、1950年頃には、はっきりしたピークが見られません。
商品価格指数の44%の構成比を占めるエネルギー価格が、1950年頃にピークアウトしなかったために、全体の商品価格指数にも、この時期に明瞭なピークが表れませんでした。

ファンダメンタルズ上の背景としては、1948年におけるサウジアラビアのガワール油田の発見など、この時期に、中東地域で超巨大油田が次々と発見されたことが重要視されます。
これにより、エネルギー価格指数の90%を占める原油の需給が大きく供給過剰となったことが、価格低迷の原因として挙げられます。 

4.農産物価格指数の分析

以下のチャートは、商品価格指数の二つ目のサブセットである農産物価格指数の1866年から2012年までの推移です。
イメージ 2

農産物価格の場合は、各商品循環のピークで、同じような形でピークを付け、ピークの値も、300から350の間で一定しています。
現在の商品循環のピークでは、農産物価格指数は、300を大きく下回っており、過去の商品循環の形を参考にすると、割安な状態であると言えます。

5.金属価格指数の分析

 以下のチャートは、商品価格指数のもう一つのサブセットである金属価格指数の1850年から2012年までの推移です。 

イメージ 3

エネルギー価格指数と同様に、金属価格指数も、1920年頃、1980年頃、2007年頃にピークが見られますが、1950年頃には、はっきりしたピークが見られません。 

また、1850年から1860年代を除いて、過去のピークの値が、いずれも、80前後であることから、現在の値は、ピークの値に近く、上昇余地は限られているように、見られます。

6.まとめ

各サブセットを比較して分析すると、以下のとおりです。

・現在のエネルギー価格指数の値は、1901年の4倍近くまで上昇しており、農産物(約1.4倍)や金属(1.6倍)と比べて、非常に大きくなっています。すなわち、エネルギー価格は、他と比べて上昇し易い性質を持っていると言えます。

・農産物価格は、過去最大値から約40%低い値となっています。これは、既に過去最高値を更新しているエネルギーや1900年以降の過去最大値とほぼ同じ水準にある金属と比べて、上昇余地があり、割安と考えられます。


次回は、商品価格指数と長期金利の推移を比較して分析してみようと思っています。