商品循環 第105回 商品価格指数(実質)と短期金利の関係

【直近の履歴】

前回は、 商品価格指数(実質)とPPIの関係を分析しました。

今回は、商品価格指数(実質)と米国の短期金利の長期的な比較を行います。

1.米国の短期金利

米国の最も重要な短期金利は、FFレートですが、最も古いデータが1954年7月であり、約60年の範囲しかカバーできないため、長期的な推移を見る対象としては、不向きです。

一方、公定歩合(ディスカウントレート)は、現在の重要性は高くありませんが、1914年11月からの約100年間の月次データが得られる為、短期金利の長期的な推移を見るのに適しているので、こちらを使用します。

先ず、セントルイス連銀のディスカウントレートのデータを、以下のサイトから取得します。


ここで注意が必要なのは、上記のデータで公定歩合短期金利)として有効なのは、2003年9月迄であり、2003年10月以降は、このデータを利用してはいけないという点です。

これは、FRBの政策変更で、2003年9月からは、FFレートのターゲットに、0.1%程度を上乗せしたプラリマリーレートを公定歩合として適用することになったからです。

従って、以下のサイトからFFレート(月次実効レート)をダウンロードして、2003年9月以降のFFレートに、0.1%を加算した値を、公定歩合として用います。


このようにして求めた、1914年11月から2012年9月までの公定歩合短期金利)のデータをプロットしたチャートが以下になります。

イメージ 1

1914年、1920年・・・短期金利のピーク
1942年~1947年・・・短期金利のボトム
1981年・・・短期金利のピーク
2011年・・・短期金利のボトム

2.商品価格指数(実質)

比較を容易にするために、上記の公定歩合と同じ期間で、商品価格指数(実質)をプロットしたグラフが以下です。


若干の誤差はありますが、短期金利のピークとボトムで商品価格のピークが表れています。

また、短期金利のピークが、商品価格のピークより遅れるのに対して、短期金利のボトムは、商品価格のピークに先行する傾向も読み取れます。

これは、短期金利のピークでは、インフレを押さえ込むために、利下げを極力、遅らせる必要があるに対して、短期金利のボトムでは、インフレ傾向が弱いために、景気に配慮して、利上げを遅らせるからだと想定されます。

3.公定歩合の平均値からの乖離 

上記の公定歩合のデータの全期間での平均値を計算すると、4.04%となります。

以下のチャートは、各月の公定歩合データと平均値との差の絶対値を計算しプロットしたチャートです。
即ち、 公定歩合のボトムとピークにおいて、チャート上にピークが表れるように表現したものです。

イメージ 2

上記の商品価格指数(実質)と良く似た形状になります。

直近の乖離は、FFレートがほぼゼロまで引き下げられているため、約4%が限界ですが、量的緩和策によって、実質的な金利が、それ以上に下がっており、乖離は、さらに、拡大しているものと思われます。

また、例えば、短期金利が長期平均に接近した場合、商品価格がボトム付近にある可能性が高いと言えそうです。

このように、短期金利のデータを分析することによって、商品価格の推移を把握することが、ある程度可能となります。

4.データ保存先

今回、作成した公定歩合のデータは、SkyDriveに保存しておきました。

ユーザーID: yada7215の公開フォルダにある、shortTermRate.xls を参照してください。