商品循環 第21回 商品と株価の価格変化率の傾向

【直近の履歴】
第20回 1920年の株価を推定し、商品価格と比較する
第19回 商品と株式の価格変化率の長期比較
第18回 PPIベースの商品循環の周期を計算する

今回は、商品循環における商品と株価の価格の変化率の関係を分析して、一般的な傾向を調べてみます。

1.商品の弱気相場における価格変化率の比較

【小麦vs株価】
期間 小麦価格変化率(A) ダウ平均変化率(B)  B-A
1920年4月~1946年6月 -28.40% +89.06% +117.45%
1951年2月~1973年4月 -2.71% +265.57% +268.29%
1980年7月~1999年4月 -32.55% +1047.19% +1079.73%

原油vs株価】
期間 原油価格変化率 ダウ平均変化率(B)  B-A
1920年~1946年 -54.07% +112.23% +166.30% 
1951年~1973年 +53.75% +258.83% +205.08%
1980年~1999年 -27.93% +1076.20% +1104.13%

過去3回の商品の弱気相場では、商品に比べて株価の上昇率が上回っており、時間の経過に伴い、次第に、両者の乖離が大きくなっている事が分かります。

【小麦vs株価の乖離の推移】
+117.45% < +268.29% < +1079.73%
原油vs株価の乖離の推移】
+166.30% < +205.08% < +1104.13%

2.商品の強気相場における価格変化率の比較

【小麦vs株価】
期間 小麦価格変化率(A) ダウ平均変化率(B)  B-A
1946年6月~1951年2月 +27.01% +22.58% -4.43%
1973年4月~1980年7月 +77.21% +1.51% -75.70%
1999年4月~2011年1月 +161.09% +10.16% -150.93%

原油vs株価】
期間 原油価格変化率 ダウ平均変化率(B)  B-A
1946年~1951年 +79.43% +34.30% -45.13%
1973年~1980年 +455.01% -3.56% -458.58%
1999年~2011年 +523.39% +14.50% -508.90%

過去3回の商品の弱気相場では、株価に比べて商品の上昇率が上回っており、時間の経過に伴い、次第に、両者の乖離が大きくなっている事が分かります。

【小麦vs株価の乖離の推移】
-4.43% > -75.70% > -150.93%
原油vs株価の乖離の推移】
-45.13% > -458.58% > -508.90%

3.乖離が大きくなっている理由

以上のように、商品の強気相場、弱気相場のいずれでも、現在に近づくほど、商品価格と株価で価格変化率の乖離が大きくなり、商品と株式の優劣がより明確になっています。

インフレの影響は、商品と株式に等しく出ているはずであり、インフレが沈静化している1980年以降も、振れ幅が大きくなっていることから、インフレが主要な原因とは考えられません。

明確な理由は分かりませんが、特に、1951年をピークとする商品循環以降で、振れ幅が大きくなっていることから、以下のように推測しています。

すなわち、1947年3月にIMFが発効して、ドル基軸が確立したことによって、FRBを始めとする各国中央銀行が、それ以前と比べて大胆な金融政策を取るようになり、振れ幅が大きくなっていると推測されます。

4.債券利回りとの比較

債券の利回りに関しても、1950年代以降に明確に、変化が見られます。

イメージ 1

上のグラフは、1927年から2007年までの米国債利回りと株式配当利回りの推移です。
青い線が、株式(S&P500)の配当利回り、オレンジ色が3ヶ月債の利回り、緑色が長期債(※20年~30年債)の利回りの推移です。

米国債の3ヶ月債と長期債の利回りに注目して見ると、1930年代~1940年代の両者は、長期金利短期金利という安定的な関係が続いていましたが、1950年代以降は、しばしば、長期金利短期金利となる逆イールドが観察され、金利水準も最大で14%を大きく超えています。

これは、1950年代以降、FRB政策金利を大胆に操作するようになった為、債券(特に短期債)の金利が大きく動いている結果だと推測されます。

5.まとめ

(1)商品循環の強気相場では、商品の名目価格の上昇率が、株式の名目価格の上昇率を上回る。
(2)反対に、商品循環の弱気相場では、株式の名目価格の上昇率が、商品の名目価格の上昇率を上回る。
(3)株式と商品の上昇率の乖離は、最近の商品循環になるほど、振れ幅が大きくなっている。
(4)この傾向は、中央銀行が大胆な金融政策を取る事によって、継続的に大きくなっている。

次回は、より実際的な投資の観点から、1980年代の商品の強気相場の投資パフォーマンスを求めてみようと思います。