【直近の履歴】
第10回 1920年ピーク時のPPI
第9回 1951年ピーク時のPPI
第8回 1980年ピーク時のPPI
前回までの3回に渡って、1920年、1951年、1980年をピークとする商品循環のPPIデータの状況を調べました。
今回は、その結果を、一旦、整理して、商品循環のピークにおけるPPIデータの振る舞いをまとめてみたいと思います。
1.強気相場の初期段階(前方テール)でのPPIの振る舞い
商品の強気相場において、PPIの前年同期比が連続して10%を超える期間(以下、PPI・10%超期間)は、複数回、見られます。
その一回目は、強気相場に入った初期段階で、以下のように、検出されます。
1920年ピーク・・・1915年12月~1918年4月(28ヶ月間)
1951年ピーク・・・1941年6月~1942年7月(14ヶ月間)
1980年ピーク・・・1973年3月~1975年6月(28ヶ月間)
現在の強気相場・・・2008年1月~2008年9月(9ヶ月間)
この期間は、チャートでは、商品循環の急峻な前方テールに相当します。
下のチャート(1980年ピークのCRB指数)では、1971年から1975年の間の指数が立ち上がっている部分に相当します。
2.商品循環のピークでのPPIの振る舞い
強気相場の2回目以降のPPI・10%超期間は、商品循環のピークに出現します。
以下に、各商品循環のピークでのPPIの振る舞いを、様々な切り口で比較してみます。
3.ピークのPPI・10%超期間
1920年ピーク・・・1919年12月~1920年9月(10ヶ月間)
1951年ピーク・・・【1回目】1946年7月~1948年2月(20ヶ月間)
【2回目】1950年10月~1951年7月(10ヶ月間)
1980年ピーク・・・1979年1月~1981年6月(30ヶ月間)
3回の平均・・・16.6ヶ月間
注)以降、1951年ピークは、2回目を採用します。
4.ピークのPPI・15%超期間
1920年ピーク・・・1920年1月~1920年7月(7ヶ月間)
1951年ピーク・・・【1回目】1946年7月~1947年9月(15ヶ月間)
【2回目】1951年1月~1951年5月(5ヶ月間)
1980年ピーク・・・1980年1月~1980年3月(3ヶ月間)
3回の平均・・・5ヶ月間
4.ピークアウト時のPPI前年同月比
PPIの前年同月比が何%でピークアウトしたか。
1920年ピーク・・・24.45%(1920年4月)
1951年ピーク・・・【1回目】33.41%(1947年2月)
【2回目】18.39%(1951年2月)
1980年ピーク・・・16.02%(1980年2月)
3回の平均・・・19.62%
5.ピークアウトに要した期間
PPIの前年同月比が10%を超えてから、ピークアウトに要した期間
1920年ピーク・・・1919年12月→1920年4月(4ヶ月)
1951年ピーク・・・【1回目】1946年7月→1947年2月(7ヶ月)
【2回目】1950年10月→1951年2月(4ヶ月)
1980年ピーク・・・1979年1月→1980年2月(13ヶ月)
3回の平均・・・7ヶ月間
6.15%超えに要した期間
PPIの前年同月比が10%を超えてから、さらに、15%超えに要した期間
1920年ピーク・・・1919年12月→1920年1月(1ヶ月)
1951年ピーク・・・【1回目】1946年7月→1946年7月(0ヶ月)
【2回目】1950年10月→1951年1月(4ヶ月)
1980年ピーク・・・1979年1月→1980年1月(12ヶ月)
3回の平均・・・5.7ヶ月間
7.商品価格のピークとの比較(推定)
ロイターのCommodity Price Index との比較。
Indebtedness, the Commodity Super Cycle & Asset Allocation
【商品価格のピーク】
1920年・・・1920年4月
1951年・・・1951年1月
1980年・・・1980年10月
【PPIの10%超え~商品価格のピーク】
1920年・・・PPIが4ヶ月先行
1951年・・・PPIが3ヶ月先行
1980年・・・PPIが21ヶ月先行
【PPIの15%超え~商品価格のピーク】
1920年・・・PPIが3ヶ月先行
1951年・・・同時
1980年・・・PPIが8ヶ月先行
【PPIのピークアウト~商品価格のピーク】
1920年・・・同時
1951年・・・PPIが1ヶ月遅行
1980年・・・PPIが9ヶ月先行
8.一般化
以上のような商品循環のピークにおけるPPIの振る舞いの中で、以下のルールは、投資上、最も重要だと考えています。
(1)商品循環のピークでは、PPIの前年同月比が15%を超える。
(2)PPIの前年同月比が15%を超えてから、8ヶ月以内に、商品価格がピークアウトする。
9.留意点
1920年と1980年の商品循環のピークでは、殆どの商品価格が同時期にピークアウトしたので、上のルールが投資を行う上で有効でした。
一方、1951年の商品循環のピークでは、商品の種類によって、ピークアウトの時期が異なり、分散化の傾向が見られたため、有効性は、他の循環と比べて低くなっています。
このような場合は、上のルールだけでは無く、個別の商品のファンダメンタルズをより重視した投資が有効です。
私は、現在の商品の強気相場は、1951年の商品循環のピークに近いと見ています。
その理由については、次回以降に説明したいと思います。
10.商品の弱気相場(後方テール)
商品の弱気相場(後方テール)で観測された、PPI・10%超期間は以下のとおりです。
1920年ピーク・・・【1回目】1933年10月~1934年8月(11ヶ月間)
【2回目】1937年3月~1937年5月(3ヶ月間)
【3回目】1941年6月~1942年7月(14ヶ月間)
1951年ピーク・・・なし
1980年ピーク・・・なし
1920年ピークの後方テールで、複数回のPPI・10%超期間が観測された理由についても、次回以降に説明したいと思います。
次回は、商品循環のボトムにおけるPPIの振る舞いを調べてみたいと思います。