商品循環 第55回 CPIとPPIの変化率の関連性をグラフ化して分析する

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第54回 マネタリーベースの推移を比較する
第53回 1950年の金融政策を振り返る
第52回 長期金利のボトムでの商品価格高騰のメカニズム

今回は、長期金利と商品循環の関係についての分析を、一時、お休みして、各商品循環のピークにおけるPPIとCPIの変化率をグラフ化して、視覚的に分析してみようと思います。

1.1920年の商品循環のピーク

下のグラフは、1915年1月から1922年12月までの、CPI(紺色)とPPI(赤色)の前年同月比の推移をグラフ化したものです。

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1917年のPPIのピークは、商品の強気相場の初期段階で、商品価格が急に上昇を開始した時期です。
1920年のPPIのピークは、商品循環のピークで、商品価格が高騰した時期です。
1921年のPPIがマイナスに落ち込んでいるのは、商品循環がピークアウトして、商品価格が急落したことを表しています。

CPIは、PPIの変化からやや遅れて、同じ方向に変化していますが、連動性は低く、一度、上昇すると、PPIが下落しても、変化し難いことが分かります。

また、CPIの変化の幅が、PPIよりも小さいことが分かります。
CPIのピークの変化率・・・20%前後

2.1947年の商品循環のピーク

下のグラフは、1941年1月から1951年12月までの、CPI(紺色)とPPI(赤色)の前年同月比の推移をグラフ化したものです。

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1917年のPPIのピークは、商品の強気相場の初期段階で、商品価格が急に上昇を開始した時期です。
1947年のPPIのピークは、商品循環の1回目のピークで、1951年が2回目のピークです。

この時期は、PPIとCPIの変化率の連動性が高いことが分かります。

また、1920年と同様に、CPIの変化の幅が、PPIよりも小さいことが分かります。
CPIのピークの変化率・・・15%~20%

3.1980年の商品循環のピーク

下のグラフは、1972年1月から1982年12月までの、CPI(紺色)とPPI(赤色)の前年同月比の推移をグラフ化したものです。

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1975年のPPIのピークは、商品の強気相場の初期段階で、商品価格が急に上昇を開始した時期です。
1980年のPPIのピークは、商品循環のピークです。

1回目のピークでは、CPIの変化は、PPIと比べてやや遅れて始まり、変化率もPPIの半分程度でした。
しかし、その後は、CPIとPPIの変化率は連動性が非常に高く、水準もほぼ、一致しています。

前の2回の商品循環と比較して、CPIとPPIのいずれもマイナスになることがなかったというのも、この時期の特徴です。
おそらく、インフレの傾向が長期的に強かったのだと思います。

CPIのピークの変化率・・・12%~15%

4.現在(2011年)の商品循環

下のグラフは、2000年1月から2011年4月までの、CPI(紺色)とPPI(赤色)の前年同月比の推移をグラフ化したものです。
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CPIは、PPIと同じ方向に変化してはいますが、連動性は低く、変化の幅も、PPIよりもかなり小さくなっています。
CPIは、長期的なディスインフレ状態にあることが分かります。
CPIのピークの変化率・・・5%前後

過去のグラフと比較すると、1920年の商品循環のパターンが、最も近いと言えます。

また、過去のPPIのピークが、2~3回だったのに比べて、現在は、5回以上のピークを持っており、CPIと比べて、PPI、すなわち、商品価格が上がり易い状況にあると言えます。

5.分析

(1)CPIとPPIの変化率の連動性の特徴は、各々の商品循環によって、異なる。
連動性・高い・・・1947年、1980年
連動性・低い・・・1920年、現在(2011年)
(2)PPIのピーク回数も、各々の商品循環によって、異なる。
1920年・・・2回
1947年・・・3回
1980年・・・2回
現在(2011年)・・・5回以上
(3)複数のCPIのピークの高さは、各々の循環内で、あまり、変らない。→商品循環のピークにおける、CPIの変化率を予測することが可能かもしれない。
1920年・・・20%前後
1947年・・・15%~20%
1980年・・・12%~15%
現在(2011年)・・・5%前後
(4)長期金利のピーク/ボトムと、CPIとPPIの変化率の推移は、関係性が薄いと考えられる。


次回は、再び、長期金利と商品循環の関係を考えたいと思っています。