ピーク・フォスフォラス(リンのピーク) (2)

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上の地図の赤く塗られた五ヶ国(中国、米国、モロッコ、ヨルダン、南アフリカ)が世界のリン鉱石生産量の9割をコントロールしています。
また、点を打ってある国は、世界の65%の硫酸を生産しています。


以下の文章は、前回からの続きです。

リンの需要は、肥料価格に反映し、最終的には食糧価格に反映します。

2007年から2008年にリン酸の肥料は5倍に値上がりしました。
これは、バイオ燃料の生産が拡大したからです。
食糧価格も高騰しましたが、2008年からの景気後退によって、バイオ燃料の需要が減少したために、肥料価格が下落して、食糧価格も低下しました。
このように、肥料価格は、バイオ燃料と連動することになった結果、非常に変動が激しくなりました。

また、肥料価格の上昇は、豊かな国と貧しい国の格差を、大きく広げます。
リン鉱石の生産量の90%は、上位五ヶ国が占めています。
最大の生産国の中国は、2008年半ばに、セーフガードとして、リン鉱石の輸出に135%の関税を課しました。
米国のリン鉱石の埋蔵量は減少し始めており、既に、輸入に依存しています。

リン鉱石の最大の輸出国であるモロッコにおいて、リン鉱石が存在するのは、西サハラ地域です。
ここは、国際的には、独立国として認められていますが、1975年からモロッコが軍事的に占領しています。
2007年に米国は、リン鉱石を手に入れるために、モロッコとの間に、自由貿易協定を締結しました。
この事実は、メディアは殆ど取り上げませんでした。
米国は、国連の安全保障理事会において提案された、モロッコに対する占領地域から退去勧告について、何度も、拒否権を発動して、潰しています。

インドのように、リン酸の殆ど全量を輸入に依存している国では、肥料価格の上昇は、大きな衝撃となります。

今後、大きな問題となるのは、硫酸です。
通常、3トンの硫酸と、3.5トンのリン鉱石から、1トンのリン酸が取れ、これが、肥料の原料となります。
硫酸は、通常、発展途上国が生産しており、その需給が、リンの価格を決定しています。

硫酸が不足しているリン鉱石の小規模生産国は、今後、OPECに似たカルテルを作る可能性があります。

このように、リン鉱石と硫酸、さらには、窒素やカリウムなどの生産国が複雑に関連しあっているために、今後の肥料価格の予測は、非常に難しくなっています。

・・・続く