中東諸国の海外農地獲得の動きとその背景

中東のバーレーンが、フィリピンで5億ドルの農業投資を行う契約をフィリピン政府と締結したというニュースです。


フィリピンは、この投資のために、1万ヘクタールの耕作地を用意しています。

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このように、中東諸国は、官民挙げてアジアやアフリカなどの農地の確保に積極的に乗り出しています。

サウジアラビアの農業大臣は、2008年11月23日に、海外農業展開のために30億リアル(約8億ドル)規模の持ち株会社を設立すると公表しました。

さらに、2009年1月26日には、サウジアラビア内閣は国王の主導で、総額53億ドル規模に上る「サウジアラビア農業海外投資基金」の設立を承認しています。

この動きの背景には、国内の水資源の枯渇と人口増加という問題があります。

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サウジアラビアは、1970年代から、国内の農業生産の拡大のために、莫大な補助金を投じてきました。
しかし、大量の農業用取水のために地下水の水位が年々低下しており、地下水の枯渇が深刻な問題になっています。

以下は、日経ビジネスonline:2009年3月3日より、田中保春氏の記事からの引用です。

●引用開始●
 筆者はこれまでサウジ国内の大規模農場や牧場をよく訪問したが、地下水の持続的確保が非常に重要な課題であると実感している。例えば、近代的大規模牧場としてギネスブックにも表彰されたリヤド郊外の大牧場では2万9000頭の乳牛が飼育されているが、乳牛は毎日大量の水を飲むうえに、餌であるアルファルファ栽培には大量の地下水が必要だ。1990年代には飛行機の窓から、小麦やアルファルファを栽培する緑色の無数の円形農場を見ることができたが、近年はその数が減り、砂漠色の円形の跡形が残る場所が、至る所で増えている。

 人口データから見ても、中東諸国の危機感は健全なものであることがよく分かる。中東諸国の人口増加率は世界でもトップクラスの水準にあり、今後も高い増加が続くと予測される。国連の2006年統計によると、2000年から2005年までの世界の人口成長率は平均1.24%だが、サウジアラビアで2.53%、アラブ首長国連邦UAE)では 4.69%、クウェートでは3.84%となっている。サウジアラビアの昨年末の人口は約2500万人だが、2015年には3000万を超えると予想されている。

 人口構成における20歳以下の若年層の比率が非常に高いため、今後中長期的に食糧をいかに確保するかという食糧保障は、必然的に大きな国家課題となる。例えば、サウジアラビアの人口構成は日本と異なる対照的ピラミッド形状であり、若年層が極めて多い。
●引用終了●