日米の景気循環の比較 第18回 長期金利と住宅投資の関係 2006年の例

1.前回のまとめ
 
前回は、日本の景気循環の重要な指標である、新設住宅着工戸数の予測に役立つ、住宅メーカーの受注速報について、分析しました。
 
今回は、住宅投資と関係の深い長期金利について、調べてみます。
 
 
住宅ローンの利用者のコストとして、金利が重要な要素となります。
一般的に、住宅ローン金利が上昇すると、コスト増から、住宅に対する需要が減り、住宅ローン金利が低下すると、コスト減から、住宅に対する需要が増えます。
 
その住宅ローン金利は、銀行の長期プライムレートに連動し、さらに、その長期プライムレートは、長期金利に大きく影響を受けるため、長期金利の動向は、新規住宅資金貸付額に影響を与えます。
 
その反対に、住宅投資の増減は、経済全体に大きな影響があるため、新規住宅資金貸付額の動向は、景気指標としての長期金利を左右します。
 
以下のグラフは、1986年7月からの日本の長期金利の推移です。
各月の月末の利回りをプロットしたものです。
データ源泉:HSCI
 
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1990年頃のバブルのピークで、8%台を付けた後、右肩下がりで低下し、現在は、1%前後で推移しています。
 
3.2003年から2013年の長期金利
 
以下のグラフは、同じ長期金利のデータを、2003年から2013年までプロットしたグラフです。
 
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以下のグラフは、同じ期間の新規住宅資金貸付額の4四半期移動平均の推移です。
 
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長期金利ほど大きく変化はしていませんが、新規住宅資金貸付額も、同じ形で動いています。
 
データでポイントを比較すると、以下のようになります。
 
長期金利のボトムとピーク】
2003年5月・・・0.538% 1回目のボトム
2004年7月・・・1.854% 1回目のピーク
2005年6月・・・1.174% 2回目のボトム
2006年7月・・・1.932% 2回目のピーク
 
【新規住宅資金貸付額のボトムとピーク】
2003年1Q・・・39,218.5 1回目のボトム
2003年4Q・・・42,541.5 1回目のピーク
2004年4Q・・・40,286.25 2回目のボトム
2006年2Q・・・44,536.0 2回目のピーク
 
上のように、 新規住宅資金貸付額が長期金利に、1~2四半期先行しているのは、住宅資金の借り入れから、耐久消費財などの関連消費も含めた支出までに、タイムラグがあり、やや、遅れて経済全体へ波及するからだと考えられます。
 
このようなことから、一般的な景気循環では、長期金利と住宅に関して、以下のような、小さな循環が存在していると考えられます。
 
景気の拡大
長期金利の上昇
住宅ローンの借り入れコストの上昇
住宅投資の減少
景気の減速
長期金利の低下
住宅ローンの借り入れコストの低下
先頭の景気の拡大に戻る
 
従って、新規住宅資金貸付額のピークアウトを確認すると、ほぼ、同時期に長期金利もピークアウトも確認出来ることになります。
 
2003年から2007年までは、この循環を2回繰り返し、その後、米国の住宅バブル崩壊による景気後退に連動して、日本も景気後退に陥ったと考えられます。
 
4.まとめ
 
今回の2006年の例を分析すると、以下のような仮説が立てられます。
 
・通常の景気循環では、長期金利と住宅投資の間で、1回から複数回の小さな循環が発生する。
・従って、新規住宅資金貸付額のピークアウトを確認しても、長期金利が同時期にピークアウトしていた場合は、必ずしも、その後、景気後退に陥るとは限らない。
 
次回、以降の分析でこの仮説を確かめて行こうと思います。