【直近の履歴】
第27回 商品の買戻しタイミング
第26回 商品の売却タイミング
第25回 商品循環と景気循環の比較
今回は、商品の話は無くて、株式の話だけになりました。
1.前回のまとめ
前回までに、1970年代以降の商品価格と株価の傾向を比較すると、景気後退を察知した場合は、商品のロングを持つよりも、株価をショートした方が、パフォーマンスが良いという結論を得ました。
今回は、それよりも、過去の1930年代からのデータを使って、同じ傾向を示しているかどうかを確認してみます。
2.1929年以降の景気循環と株価の変化
以下のデータは、1929年以降の米国の景気循環の日付データで、△が景気の山、▼が景気の底を表しています。
数値は、ダウ平均の月次CLOSE価格で、百分率は、一つ上の行の株価との変化率です。
右端の○と×は、景気循環と株価の変化が矛盾が無ければ、○、矛盾していれば、×をふりました。
例えば、景気後退局面で株価が、下がっていれば、○、上がっていれば、×となり、景気拡大局面では、その逆となります。
△ 1929年8月 380.33
▼ 1933年3月 55.4 -85.43% ○
△ 1937年5月 174.71 215.36% ○
▼ 1938年6月 133.88 -23.37% ○
△ 1945年2月 160.4 19.81% ○
▼ 1945年10月 186.6 16.33% ×
△ 1948年11月 174.76 -6.35% ×
▼ 1949年10月 189.54 8.46% ×
△ 1953年7月 275.38 45.29% ○
▼ 1954年5月 327.49 18.92% ×
△ 1957年8月 484.35 47.90% ○
▼ 1958年4月 455.86 -5.88% ○
△ 1960年4月 601.7 31.99% ○
▼ 1961年2月 662.08 10.03% ×
△ 1969年12月 800.36 20.89% ○
▼ 1970年11月 794.09 -0.78% ○
△ 1973年11月 822.25 3.55% ○
▼ 1975年3月 768.15 -6.58% ○
△ 1980年1月 875.85 14.02% ○
▼ 1980年7月 935.32 6.79% ×
△ 1981年7月 952.34 1.82% ○
▼ 1982年11月 1,039.28 9.13% ×
△ 1990年7月 2,905.20 179.54% ○
▼ 1991年3月 2,913.86 0.30% ×
△ 2001年3月 9,878.78 239.03% ○
▼ 2001年11月 9,851.56 -0.28% ○
△ 2007年12月 13,264.82 34.65% ○
▼ 2009年6月 8,447.00 -36.32% ○
集計すると以下のとおりです。
景気拡大期に株価が下落したケース:1回・・・1948年11月のみ
景気後退期に株価が上昇したケース:7回
小計:8回
景気循環の全データ:27回
景気循環と株価が相反した割合:29.6%
景気拡大期に株価が下がる可能性は低いのですが、景気後退期に株価が上がるケースが、時折、見られます。
3.CPIとの関係
景気後退期にも関わらず、株価が上昇する理由として考えられるのは、インフレにより、ファンダメンタルズを無視して、資金が株式に流れ込むケースが考えられます。
以下のデータは、上記の景気循環のデータにCPIの前年同月比を対応させたものです。
△ 1929年8月 1.17%
▼ 1933年3月 ○ -10.00%
△ 1937年5月 ○ 5.11%
▼ 1938年6月 ○ -2.08%
△ 1945年2月 ○ 2.30%
▼ 1945年10月 × 2.26%
△ 1948年11月 × 4.76%
▼ 1949年10月 × -2.87%
△ 1953年7月 ○ 0.37%
▼ 1954年5月 × 0.75%
△ 1957年8月 ○ 3.66%
▼ 1958年4月 ○ 3.58%
△ 1960年4月 ○ 1.72%
▼ 1961年2月 × 1.36%
△ 1969年12月 ○ 6.20%
▼ 1970年11月 ○ 5.60%
△ 1973年11月 ○ 8.25%
▼ 1975年3月 ○ 10.25%
△ 1980年1月 ○ 13.91%
▼ 1980年7月 × 13.13%
△ 1981年7月 ○ 10.76%
▼ 1982年11月 × 4.59%
△ 1990年7月 ○ 4.82%
▼ 1991年3月 × 4.90%
△ 2001年3月 ○ 2.92%
▼ 2001年11月 ○ 1.90%
△ 2007年12月 ○ 4.08%
▼ 2009年6月 ○ -1.43%
これを見ると、インフレによって、景気後退期にも関わらず、株価が上昇したと断言できるのは、1980年7月のみでした。
4.考察
1940年代から1950年代は、大恐慌後の株価の低迷もあって、景気と株価が相反する動きが、高い確率で見られました。
一方、1970年代以降は、インフレの時を除いて、景気と株価が相反するケースはあまり見られません。
(相反ケースの1982年と1991年においても、イールドカーブで株価の売却タイミングを決めた場合には、株価の変化率はマイナスでした。)
これは、1971年の金とドルの交換停止によって、米国の金融政策の自由度が増した結果、株価の振れ幅が大きくなっていることが、原因だと考えられます。
従って、景気後退を察知した場合は、商品のロングを持つよりも、株価をショートした方が、パフォーマンスが良いというルールは、不兌換紙幣のドル基軸が確立した1970年代以降に成り立つものと言えます。
また、株式のショートポジションを建てる際には、インフレを警戒すべきであるということも分かりました。
次回は、これまでの商品と株式の混合戦略のルールを、一旦、整理してみようと思います。