商品循環 第24回 2008年の投資パフォーマンス分析

【直近の履歴】
第23回 1980年の投資パフォーマンス分析
第22回 1980年の商品投資シミュレーション
第21回 商品と株価の価格変化率の傾向

1.前回の結果

前回の分析の結果、1980年の商品の強気相場において、イールドカーブなどを利用して景気循環に沿った株式投資を行った方が、商品投資よりもパフォーマンスが良かったことが分かりました。

今回は、2000年から2008年の商品の強気相場においても、同様な傾向があるかどうかを、シミュレーションで投資パフォーマンスを測定して解析したいと思います。

2.商品投資のシミュレート

2000年から2008年の強気相場で、CRB商品指数に連動するETFを売買した場合を想定します。
今回は、日次のCRB指数を以下のサイトから取得しました。
Thomson Reuters/Jefferies CRB Index

【前提条件】

・購入年月・・・2000年4月3日。2000年3月のPPIで商品循環のボトムを確認。第17回を参照
・売却年月・・・2008年9月2日。2008年8月のPPIで商品循環のピークを確認。第8回を参照
・購入時のCRB指数・・・168.856
・売却時のCRB指数・・・378.546
・信託報酬・・・年率0.35%:リクソー(Lyxor) ETF コモディティーズ CRB
・税率・・・20%

【結果】
・CRB指数上昇率:124.18%
・税引き前利益・・・202.03
・税引き後利益・・・161.62
・利益率・・・95.72%
・単利年利・・・11.37%
・実質年利・・・8.30%

3.株式投資のシミュレート

2000年から2009年の間の景気循環に沿って、S&P500指数の売買を行います。
以前、当ブログで行ったイールドカーブを用いたシミュレーションの結果は、以下のとおりです。

【前提条件】
・開始~終了
  2000年9月11日・・・S&P500指数空売りETFの購入
  2002年11月7日・・・空売りETFの売却。S&P500指数連動ETFの購入
  2006年9月21日・・・連動ETFの売却。S&P500指数空売りETFの購入
  2009年3月19日・・・空売りETFの売却。
・開始時のS&P500指数・・・1356.08
・開始時の資金残高・・・5,551.75
・終了時のS&P500指数・・・784.04
・終了時の資金残高・・・20,979.41
詳細は、検証システム 第45回 長期40年シミュレーション CPIトレンドの判定を参照してください。

【結果】
・S&P500指数上昇率:-41.18%
・利益率・・・277.89%
・単利年利・・・32.69%
・実質年利・・・16.93%

4.比較分析

2000年から2008年の商品の強気相場でも、株式投資の方が、パフォーマンスで商品投資を上回りました。

【実質年率の比較】
商品投資(8.30%) < 株式投資(16.93%)

やはり、以下のように、景気後退期における株式のショートポジションの高いパフォーマンスが、両者の差に表れました。

【株式のショートポジションのパフォーマンス(2000年~2008年)】
2000年9月11日~2002年11月7日・・・実質年率:21.03%
2006年9月21日~2009年3月19日・・・実質年率:25.99%

商品と株式のロングポジションのパフォーマンス比較でも、株式投資の方が上回っていますが、その差は、2%強と前回よりも僅差でした。

現在のファンダメンタルズを考えると、今後、ロングポジションでは、商品のパフォーマンスが、株式を上回る可能性もあると思います。

【商品と株式のロングポジションのパフォーマンス比較(2000年~2008年)】
商品(2000年4月3日~2008年9月2日)・・・実質年率:8.30%
株式(2002年11月7日~2006年9月21日)・・・実質年率:10.88%

ちなみに、前回の1980年の株式のショートポジションのパフォーマンスと、商品と株式のロングポジションのパフォーマンス比較は、以下のとおりです。

【株式のショートポジションのパフォーマンス(1980年)】
1973年7月27日~1974年月9日27日・・・実質年率:51.63%

【商品と株式のロングポジションのパフォーマンス比較(1980年)】
商品(1973年7月~1980年4月)・・・実質年率:3.25%
株式(1974年月9日27日~1980年12月19日)・・・実質年率:10.88%

5.まとめ

前回の結論と総合すると、以下のような傾向がありそうです。

(1)商品の強気相場であっても、商品だけではなく、株式と組み合わせて、投資を行った方が、パフォーマンスが良い。

(2)特に、景気後退期は、株式のショートポジションが、商品のロングポジションよりも有効である。

(3)イールドカーブは、商品投資の先行指標として、PPIよりも有効に機能するかもしれない。

次回は、さらに、商品循環と景気循環の関係を調べて、上の推論を実証していきたいと思います。