中国の完全雇用達成と為替の自由化

従来、中国の農村部には、約1.5億人の余剰労働力があるとされてきました。しかし、2004年以降、一貫して労働需要の伸びが労働力人口を上回っており、2009年には、中国の農村部の余剰労働力は無くなり、完全雇用が達成される見込みです。

完全雇用が達成されると、生産性の伸びに従って、賃金が上昇するために、これまで、低賃金を武器にしてきた中国の労働集約型輸出産業の競争力が落ちることになります。その一方で、賃金上昇は、国内の賃金格差を是正して消費を活発にして、内需型の商業や観光業などのサービス業の成長を促します。この結果、大きな失業問題は発生せずに、多くの労働者は低賃金の輸出型製造業から高賃金の内需型のサービス業に移動することになります。

また、農業従事者が減少した結果、政府の農業政策は、農民への所得補償から、農業機械の導入や農地の集約化などの近代化投資に重点が移っています。その結果、今後、中国の農業の国際競争力の向上が図られると考えられます。

現在、中国政府は、人民元の切り上げを遅らせていますが、輸出企業の競争力低下や輸入農産物による農業の空洞化といった為替の自由化のデメリットは、完全雇用による産業構造の変換によって解決できると考えられます。
さらに、為替の自由化は、過剰流動性を減少させて、インフレを緩和し、購買力の向上から内需をさらに刺激するという大きなメリットがあるので、2009年以降の早い段階で、中国政府は、政策転換に踏み切ると私は考えています。