商品循環 第71回 原油の実質価格の長期的推移

【直近の履歴】
第70回 商品循環の周期を再計算する
第69回 1860年の商品循環のピークを決定する
第68回 1920年の商品循環のピークを再検証する

前回は、1864年から1980年までの商品循環のピークについて、周期などを決定しました。

今回から複数回にわたって、個別商品の実質価格の推移を、商品循環のピークに沿って、分析することにします。
今回は、原油価格の推移を調べます。

1.150年間の名目価格の推移

EIAの以下のサイトでは、1859年から2010年までの原油価格(名目)を表示しています。

U.S. Crude Oil First Purchase Price (Dollars per Barrel)


このデータを使って、1859年から2010年の約150年間にわたる原油価格(名目)の推移をグラフ化すると、以下のとおりです。

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2.150年間の実質価格の推移

さらに、名目の原油価格から物価変動分を除去して、実質価格を求めてみます。
CPIのデータは、以下のサイトから取得しました。
Historical Value of U.S. Dollars

1861年から2010年までの実質での原油価格の推移は、以下のとおりです。

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注)
1.1967年を1ドルとして計算されています。
2.原油の商業生産が始まる前の1959年~1960年の価格データは、ノイズとして対象外としました。

このように、現在の原油価格は、物価変動分を除いた実質で見ると、1864年以来の150年ぶりの高騰であると言えます。

しかし、1864年と現在では、原油は、利用方法が、大きく異なっており、両者の価格を比較することは、あまり意味がありません。

すなわち、19世紀までは、原油は、ランプの燃料として主に使われており、現在のような輸送用燃料として使われ始めたのは、20世紀に入ってからでした。

従って、原油の実質価格の推移を見る場合は、以下のように、1901年からのデータを利用すべきだと考えられます。

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3.原油価格のブレイクポイント

次に、原油の実質価格を過去から現在まで調べて、過去最高値を更新した時点(ブレイクポイント)とピークの位置を決める事にします。

1901年・・・3.84ドル
・・・
1917年・・・4.06ドルでブレイク
1920年・・・5.13ドルでピークアウト
・・・
1979年・・・5.81ドルでブレイク
1981年・・・11.75ドルでピークアウト
・・・
2008年・・・15.05ドルでブレイクするとともに、直近のピークを付ける。

4.原油の実質価格と商品循環の関係

上のデータから、それぞれの商品循環のピークで、原油価格が過去最高値を更新したかどうかを、調べると以下の通りです。

商品循環のピーク・・・過去最高値の更新有無(更新有り:〇、更新無し:×)
1917年~1920年・・・〇
1947年~1950年・・・×
1980年~1981年・・・〇
2008年~現在・・・〇

過去4回の商品循環のうち、3回で、原油価格が実質価格ベースで過去最高値を更新したということになります。
言い方を変えると、「原油は、商品循環のピークにおいて、75%の確率で実質価格ベースで過去最高値を更新する。」ということになります。

5.データ保存先

今回、作成した原油価格(名目と実質)のデータは、SkyDriveに保存しておきました。

ユーザーID: yada7215の公開フォルダにある、crude_oil_real_price.xls を参照してください。


次回は、トウモロコシの価格について、今回と同様の分析を行ってみたいと思います。