イールドカーブに関するQ&A

コメントで、イールドカーブに関する幾つかの質問があったので、以下に回答します。

質問1.「超低金利政策下において逆イールドは発生しうるのか?」

FRB政策金利、すなわち、FFレートの誘導目標を、ゼロ%近辺に設定した場合、3ヶ月物米国債の利回りは、FFレートの影響を大きく受けるため、ほぼ、ゼロ%となります。

一方、10年債の利回りは、財政収支が改善し、成長率が下がったとしても、ゼロ金利になる可能性は、ほぼ無いので、長短金利差は、プラスとなり、逆イールドは発生しません。

従って、ゼロ金利政策を続ける限り、逆イールドは発生しないと言ってよいと思います。

質問2.「順イールドのままリセッションになったという事例はあったのか?」

下のグラフは、1927年から2007年までの、米国債3ヶ月債利回り(橙色)、米国債長期債利回り(緑色)、S&P500株式配当利回り(紺色)の推移です。
イメージ 1

グラフを見ると、1930年代初めから1950代半ばまでは、長期債利回りが、3ヶ月債利回りを常に上回っており、順イールドだったことが分かります。

一方、この期間中には、1937年,1945年、1948年、1953年をピークとして、4回の景気後退が発生していました。

従って、順イールドのまま景気後退に陥ったことになります。

これは、1929年の世界恐慌以降、政策的に、短期金利が低く抑えられ(3/8%に固定)、さらに、第二次世界大戦の戦費調達の為、FRB米国債を大量に引き受け、長期金利も2.5%に固定化された結果、イールドカーブに景気の状況が反映されなくなったためです。

このように、金融政策の自由度が失われ、人為的に金利が決められている状況下では、イールドカーブは景気の先行指標とはなりません。

逆に、現在のように、FRBの独立性が保たれ、FRBが自主的に政策金利を決定出来る環境下では、イールドカーブが景気後退の先行指標として、有効に機能すると考えられます。

質問3.「2000年のITバブル崩壊時、日本では、順イールドのままリセッションに陥ったのではないか?」

BISが、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、日本、オランダ、イギリス、アメリカの8カ国について1977年1月から1993年4月の期間で、各国の国債イールドカーブを研究した結果によると、逆イールドと景気後退の相関関係は、以下のとおりです。

強い・・・カナダ、ドイツ、アメリ
弱い・・・日本
中間・・・その他の国々

従って、JGBのイールドカーブから日本景気後退を予測することは、出来ず、順イールドのまま景気後退に陥ることも、十分にあります。

日本の景気後退を予測する場合も、まず、米国債イールドカーブを見て、米国の景気後退を予測して、その関連で、日本の景気後退の可能性を検討するといった手順が必要になります。

以上