投資観 第45回 1937年~1950年に逆イールドが発生しなかった理由

前回は、1937年6月から始まる米国の景気後退について、米国債イールドカーブとの関係を調べました。

今回からは、1934年から1961年までの、長期と短期の米国債利回りの推移を分析して、米国債の逆イールドが発生しなかった理由を探ってみたいと思います。

以下のグラフは、1934年5月から1961年8月までの、米国債3ヶ月既発債と米国債10年新発債の利回りの推移です。
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このグラフを見ると、1950年前後を境に、利回りの動き方が大きく変わっていることが分かります。

1950年以前は、利回りの変動が非常に少なく、ほぼ、横に一直線です。
これは、1929年の大恐慌後の不況と1939年から始まる第二次世界大戦を通じて、FRBが米政府から直接、米国債を買い入れて金利の変動を抑える、国債価格維持政策が行われていたためです。FRBは、長期金利を、2.5%に維持することが政策目標だったと言われています。

短期金利も、大恐慌後のデフレに対応し、景気を刺激する目的で、ほぼ、0%に抑えられていました。

しかし、景気が次第に回復し、さらに、軍事費の支出が増えてくると、短期金利を、ゼロに抑えたことによる弊害が出始めます。

以下のグラフは、最初のグラフと同じ期間における、米国のCPIの前年同月比の推移です。

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1939年から始まった第二次世界大戦の影響で、1942年頃からインフレが加速して、物価上昇率が10%を超えるようになり、終戦直後の1947年には、20%近くに達しました。

この結果、第二次世界大戦後のインフレに対応するために、1951年に米財務省FRBは、「アコード」を締結して、国債価格の維持政策を撤廃しました。

「アコード」の締結後、FRBは、物価の安定を政策目標として、短期金融市場の目標レートの操作を通じた金融政策に専念し、一方、米財務省は、米国債市場に向き合って、財政政策を行うようになり、長短の金利が市場で形成されるようになりました。1950年以降に、利回りの変動が大きくなったのはこのためです。

このように、1937年から1950年に、逆イールドが発生しなかった理由は、FRB国債価格維持政策を実施するために、長短金利を固定したことが理由だと考えられます。

次回は、1950年から1961年に、逆イールドが発生しなかった理由を探ってみたいと思います。