投資観 第47回 米国債イールドカーブの有効性のまとめ

前回は、1951年から1961年までに、米国債の逆イールドが発生しなかった理由を探ってみました。

今回は、このシリーズの最終回として、米国の景気後退の先行指標としての米国債イールドカーブ有効性について、まとめます。

これまでに述べてきたように、米国債イールドカーブは、1970年代以降、7度の景気後退を全て正確に予測してきました。現時点では、米国の景気後退の先行指標として、最も高い精度の指標の一つであると言えます。

しかし、その一方で、1930年代から1960年代に発生した、6度の景気後退の一度も、予測を出来ませんでした。また、1966年には、景気後退入りを予測しましたが、その後、景気後退に陥ることはありませんでした。このように、1930年代から1960年代にかけて米国債イールドカーブは、景気後退の先行指標として、全く機能していませんでした。

この時期に、先行指標として機能しなかった理由をまとめると、以下のようになります。

1.金利を人為的に固定化する政策
大恐慌後ならびに第二次世界大戦中の米国債価格の維持政策の実施により、金利が固定化された結果、1934年から1950年の間、逆イールドが出現しなかった。

2.強引な金融引き締め政策
第二次世界大戦後の高インフレを克服するために、強引ともいえる、金融引き締め政策が実施されたため、1951年から1961年の間、逆イールドが出現しなかった。

3.突発的で大規模な財政支出
1966年に逆イールドが出現し、景気後退を予測したが、その後、ベトナム戦争の拡大により、軍事費の支出が急増し、景気後退が回避されてしまった。

上のように、恐慌や戦争などの非常事態の発生によって、米国の金融・財政政策が極端な方向に振れると、米国債イールドカーブの景気後退の先行指標としての有効性が低下すると考えられます。

従って、今後、米国債イールドカーブを景気後退の先行指標として利用する場合は、その時点での、米国の金融・財政政策の動向を注視した上で、有効性を評価することが必要であると言えます。