天然ガスの『デュアル供給システム』を指向する韓国

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韓国が、天然ガスの調達を、LNG単独から、パイプライン・ガスとの『デュアル供給システム』に変えつつある状況について、JOGMECがレポートしています。
(上の図は、ロシアのガスプロムによる新天然ガス・パイプライン計画です。)


・2011年8月24日、金正日総書記はウランウデでMedvedev 大統領と会談し、「ロシア-朝鮮半島ガス・パイプラインの建設を検討すること」で合意した。

・一方、ロシアと韓国は、李明博大統領訪ロ時の2008 年にロシアから天然ガス・パイプラインでの輸入で合意しており、今回の北朝鮮との合意で、政治的な障害はなくなったと見なされる。

・但し、実務的なパイプライン計画の策定には膨大な作業が必要とされ、関係者の発言でも実現までには相当の時間を要するとしている。更に実務上での摩擦は完全には払拭されないと思われる。

北朝鮮によるパイプライン閉鎖というリスクが一部で懸念されているが、パイプラインによる天然ガスは韓国需要の5 分の1程度であり、韓国に決定的影響を与える手段とはならず、一方で北朝鮮側は通過料収入を長期的に失うこととなるので、北朝鮮が合理的経済主体であるならば有り得ない。

・ジャーナリズムでは北朝鮮の政治的な方針転換が大きく取り上げられているが、より重要なのは、天然ガス政策において日本と同様にLNG を基軸として来た韓国が、パイプライン・ガスとの天然ガスの『デュアル供給システム』を目指しており、粘り強くその実現を働きかけて来た点である。

・太平洋圏におけるLNG 価格がJCC 連動で高値圏にあることに比して、パイプラインガスが約20%安価に調達できる点、ロシア産ガスを長期契約で調達でき供給の安定性を確保できる点、中長期的な市場形成においてLNG 価格を抑制する効果が期待できる点が韓国にとってのメリットである。

・これを実現するために、韓国は1990 年代より、国内天然ガス・パイプライン網を整備し、電力用以上に都市ガス(工業、商業、民生)用需要を呼び込むなど、条件整備を積み上げた実績がある。

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日本でも、今後、原発の発電容量の不足を補う為に、天然ガスを大量調達する場合、トータルコストで安価なパイプラインによる輸入を検討すべきかもしれません。