本格的な天然ガス時代突入へ

JOGMEC特別顧問の石井彰氏が、今回の原発事故を受けて、今後のエネルギー情勢の見通しに関して、意見をまとめられています。


おそらく、石井氏の考え方が、多くのエネルギー関係者が共通して思い描いているメインシナリオだと思いますので、以下に、概要部分を引用します。

・今回の福島第一原子力発電所の深刻な事故によって、今後、短期的に日本のエネルギー事情が大きく変わるだけでなく、中長期的にも地殻変動的な動きが日本のみならず世界的にも生じてくるだろう。

・短期的には、大規模停電の緩和のために、LNG と石油の緊急輸入が行われることになるが、物量的調達には問題がないものの、特にLNG のスポット価格には相当の影響があるだろう。

・中長期的には、世界的に原子力発電所の新規建設が一部中止、ないし遅延が生じ、失われた原子力発電量の代替電源の大半は天然ガス発電となろう。このため、5 年~10 年スパンでは、LNG の追加需要が50 百万t/年程度増加する可能性がある。特にアジア太平洋地域で、新規のLNG 案件の立ち上げが続々と続く可能性が高い。アジアも含めて世界的に本格的天然ガス時代となる可能性が極めて高く、太陽光発電等の再生可能エネルギーや、石炭+CCS による失われた原子力発電の代替は、限定的なものに留まる可能性が高い。

・しかし、天然ガスは、今後全てが順調に推移する可能性は低い。突発的な需要増大によって、天然ガスLNG 価格の値上がり、ないしシェールガス革命、非在来型天然ガス革命の世界的な広がりにもかかわらず、価格低下トレンドが鈍化する可能性が高い。特に、世界の新規LNG 案件の太宗を占めるであろう豪州では、労働力の需給逼迫とEPC コントラクターのオーバーストレッチで、コストアップと工事遅延が必至。日本としては、豪州の新規LNG 以外の天然ガス開発・調達も模索する必要があろう。具体的には、カナダ太平洋岸のシェールガス・ベースのLNG の推進や、サハリンの膨大な未開発天然ガスのパイプライン輸入に関して、原点に返っての真剣な再検討等である。

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「地球上には、非在来型の天然ガスが豊富にあるので、今後のエネルギー情勢を心配する必要は無い。」という楽観的な意見が、一部で見られますが、私も石井氏と同様に、全ての天然ガス開発が順調に推移する可能性は低いと思っています。

有望と言われているシェールガスに関しても、減退の早さやによる採算悪化や、環境問題による規制強化の懸念から、一気に開発意欲が失われる可能性も相当に高いと考えられます。

また、今後、サハリンから東シベリアに存在する未開発の天然ガス資源を開発できるかどうかが、日本の経済成長にとって重要なキーファクターの一つになってくると思います。