検証システム 第45回 長期40年シミュレーション CPIトレンドの判定


前回、CPI伸び率の値を基準に、インフレ時において、ショートポジションの構築を回避することによって、若干ながらパフォーマンスが向上することが、分かりました。

今回は、さらに詳しく、CPIのトレンドを分析する方法を検討してみます。

1.CPIのトレンド

CPIのトレンドは、CPIの24ヶ月移動平均と当月のCPIとの乖離率で判定します。
以下に、インフレの最も激しかった1979年1月から1980年12月のCPI乖離率を列挙します。

年月→CPI乖離率
1979年1月 7.85%
1979年2月 8.40%
1979年3月 8.77%・・・逆イールド検知(1979年3月1日)
1979年4月 9.26%
1979年5月 9.86%
1979年6月 10.27%
1979年7月 10.64%
1979年8月 10.82%
1979年9月 11.10%
1979年10月 11.06%
1979年11月 11.13%
1979年12月 11.31%

1980年1月 11.88%
1980年2月 12.38%
1980年3月 12.97%
1980年4月 13.10%
1980年5月 13.08%
1980年6月 13.18%・・・CPI乖離率のピーク
1980年7月 12.10%
1980年8月 11.82%
1980年9月 11.67%
1980年10月 11.63%
1980年11月 11.45%
1980年12月 11.37%・・・逆イールド検知(1980年12月19日)

上のように、1979年3月1日に逆イールドを検知した時点では、CPIのトレンドは、上向きでしたが、1980年6月にピークアウトして、1980年12月19日に逆イールドを検知した時点では、CPIのトレンドは、下向きになっていました。

株価についても、1979年3月1日に逆イールドを検知した後は、景気後退入りしたにも関わらず、インフレで資金が流れ込んだために、株価が上昇しましたが、1979年12月19日に逆イールドを検知した後は、インフレが収まってきたために、株価が下落して行きました。

2.インフレの判定条件の変更

上の結果から、逆イールドを検知した際に、ショートポジションを構築するかどうかの判定条件を以下のように、変更します。

直近のCPI伸び率(前年同月比)が8%以上で、かつ、CPIのトレンドが上向きの場合は、インフレが高進中とみなして、ショートポジションの構築を行わない。


3.長期シミュレート結果

上の前提条件で、40年間の長期シミュレートを行った結果は以下の通りです。

取引→年利率(単利)→資金残高
1.1969年ショート →△30.39%→114.28
2.1970年ロング  →△ 8.60%→145.41
3.1973年ショート →△48.93%→228.43
4.1974年ロング →△111.61%→419.64
5.1980年ショート →△19.45%→508.06
6.1982年ロング →△21.88%→1,341.81
7.1989年ショート →△9.95%→1,486.50
8.1990年ロング →△27.35%→5,551.75
9.2000年ショート→△23.64%→8,395.29
10.2002年ロング →△12.68%→12,477.41
11.2006年ショート→△27.26%→20,979.41
12.2009年のロング→△46.65%→28,319.67

4.実質年利(複利・名目)の計算

長期シミュレート結果から、実質年率を求めると以下のとおりです。

当初元本:93.07
最終残高:28,319.67
期間:40.5年

実質年利(複利・名目):17.89%

5.実質年利(複利・実質)の計算

長期シミュレート結果から、物価上昇分を控除して、実質年率を求めると以下のとおりです。

当初元本:93.07
最終残高:27,869.54
期間:40.5年

実質年利(複利・実質):17.83%


6.年代別の実質年利

上の実質年利(実質)を年代別に分けて求めると以下のようになります。

1969年~1980年・・・29.46%(21.91%)
1980年~1989年・・・20.89%(20.67%)
1989年~2000年・・・13.67%(14.86%)
2000年~2010年・・・19.26%(19.88%)

括弧内は名目

7.結果分析

上記のように、CPIトレンドを判定条件に加えることによって、インフレ時のパフォーマンスを大きく改善することが出来ました。

1980年代のような商品の強気相場、すなわち、株式の弱気相場でも、逆イールド/ノーズタイブ戦術を適用することによって、株式投資で、充分な利益を得る事が出来ると思います。

次回は、少し視点を変えて、1979年から1980年の原油などの商品価格の動きを見てみようと思います。
景気後退でも株価が上昇したように、原油価格もファンダメンタルズを無視した動きを見せていました。
このような、商品バブルと株価の関係を明らかにしたいと思います。