検証システム 第43回 長期40年シミュレーション 1979年の特殊事情


今回は、逆イールド/ノーズタイブ戦術の過去14回の取引で、唯一、損失となった1979年のショートポジションについて、詳しく検証してみたいと思います。

1.1979年~1980年の景気循環と予測

●景気後退入りの予測
1979年3月1日に移動平均金利で逆イールドを検知し、半年後の景気後退入りを予測します。
取引に関しては、その後、半年間かけて、ロングポジションをカバーし、ショートポジションを構築。S&P500の平均売却株価は、102.33ポイントでした。

景気後退の予測は、的中して、実際に、1980年1月に景気後退入りしました。

●景気底入れの予測
ノーズタイブから予測した株式の購入日(すなわち、景気底入れ)は、1980年6月25日でした。
景気底入れの予測も、的中して、実際に、1980年7月に景気は底入れしました。

しかし、1980年6月25日のS&P500の株価は、116.72ポイントで、平均売却株価を、14.39ポイント上回り、ショートポジションは、損失となりました。

●株価の底値
この期間中の株価の底値は、1980年3月27日の98.22ポイントでした。
もし、この日に、ショートポジションをカバーしても、僅か、4.11ポイント(4%)の利益しか出ませんでした。

このように、1979年~1980年の場合、逆イールド/ノーズタイブ戦術で、ほぼ、正確に景気の山と谷を予測したにも関わらず、株価が殆ど下落しなかったために、ショートポジションが大きな損失となってしまいました。

これには、当時のインフレが関係して来ます。

2.インフレとの関係

以下は、14回の各ポジションを建てた月の直近月(=前月)におけるCPIと消費者物価上昇率です。
CPIAUCNSからデータを取得しました。

直近年月→直近年月のCPI→直近年月の前年同月のCPI→消費者物価上昇率

1.1969年7月 →36.8→34.9→5.44%
2.1970年4月 →38.5→36.3→6.06%
3.1973年6月 →44.2→41.7→6.00%
4.1974年8月  →50→45.1→10.86%
5.1979年2月 →69.1→62.9→9.86%
6.1980年5月  →81.8→73.8→10.84%
7.1980年11月 →85.5→75.9→12.65%
8.1981年12月  →94→86.3→8.92%
9.1989年7月 →124.4→118.5→4.98%
10.1990年8月 →131.6→124.6→5.62%
11.2000年8月→172.8→167.1→3.41%
12.2002年10月 →181.3→177.7→2.03%
13.2006年8月 →203.9→196.4→3.82%
14.2009年2月 →212.193→211.693→0.24%

上のように、1970年代半ばから、1980年代初めまで、米国は、約9%を超えるインフレに見舞われていました。

1979年の場合も、インフレによって、景気循環を無視して、資金が株式に流れ込んだために、名目の資産価格が殆ど下がらなかったと考えられます。

しかし、その一方で、1981年7月からの景気後退では、インフレの傾向が残っていたのにも関わらず、株価は大幅に下落しており、インフレ時の予測の難しさを表しています。

3.混合戦術の可能性

逆イールド/ノーズタイブ戦術は、イールドカーブから景気循環を予測して、株式の売買タイミングを決める手法なので、インフレ時のように、株価が景気循環を無視した動きをする場合は、有効性が薄れます。

次回は、インフレ時とそれ以外の時で、Buy&Hold戦術と、逆イールド/ノーズタイブ戦術を使い分けるような混合戦術を採用した場合のシミュレーションを行い、その有効性を評価したいと思います。