検証システム 第36回 ノーズダイブの有無判定とロジック確定


今回は、前回までの検証の結果から、ノーズダイブを再定義して、パフォーマンスを測定してみます。

1.景気後退入りの時期の判定条件

再定義の前に、景気後退入りの時期の判定条件を整理します。

これまでの検証から、景気後退入りの時期と短期債金利の下落トレンドの開始時期の前後関係を比較して、株式購入タイミングを変えることによって、良いパフォーマンスを得られることが分かりました。

しかし、実務上、景気後退入りをリアルタイムで判断するのは難しいので、その代替条件を決める必要があります。

過去の景気後退のデータから移動平均金利の逆イールドを検知した日から、既発債で平均5.8ヶ月、変動利付き債で、平均10.7ヶ月後に景気後退入りしています。

従って、移動平均金利の逆イールドを検知日から、既発債の場合、5.8ヶ月後、変動利付き債の場合、10.7ヶ月後を、景気後退入りの判定日として用いることにします。

2.ノーズダイブの再定義

【逆イールド監視】
 米国債の3ヶ月債と10年債の90日移動金利の逆イールド発生を監視します。

金利下落トレンド監視】
 ・上記の逆イールドを検出した日から、短期金利の下落トレンド開始の監視期間に入ります。

 ・監視期間に入ると、3ヶ月債の日次金利と90日移動平均金利に関して、以下の条件が、成立するかどうかを、毎日、確認・記録します。

 条件:日次金利 - 移動平均金利 < 0

 上の条件が連続して、30日間連続した場合に、金利の下落トレンドに入ったと考え、今度は、短期金利の下落トレンド終了日の監視期間に入ります。

 ・金利の下落トレンドは、以下の条件が成立した場合に終了します。

 条件:日次金利 - 移動平均金利 ≧ 0

【ノーズダイブ発生有無】

 逆イールド発生日と短期金利の下落トレンドの開始日を比較して、以下の条件が成立すれば、景気後退入りの前に、金利下落トレンドが開始したと見なして、ノーズタイブ発生ケースとします。

 既発債の場合、金利下落トレンド開始日 ≦ 逆イールド発生日の5.8ヶ月後

 変動利付き債の場合、金利下落トレンド開始日 ≦ 逆イールド発生日の10.7ヶ月後

 上記の条件が成立しない場合は、景気後退入りの後に、金利下落トレンドが開始したと見なして、ノーズタイブ非発生ケースとします。

【株式購入タイミングの決定】

 金利の下落トレンドが終了した時点で、株式購入タイミングを決定します。

 ●ノーズダイブ発生ケースの場合
  
  金利の下落トレンドの開始日から終了日のデータを全て参照して、日次金利移動平均金利から最も乖離した日(※)を、ノーズダイブ日とします。

  ※最大乖離日: (日次金利 - 移動平均金利)の絶対値が最大の日

  ノーズタイブ日の一年後の日を株式購入タイミングとします。

 ●ノーズダイブ非発生ケースの場合
  
  金利の下落トレンドの終了日を株式購入タイミングとします。

3.パフォーマンス測定

上のようにして、再定義したノーズダイブのロジックを過去の景気後退に適用して、株式購入のパフォーマンスを測定してみます。

逆イールド検知日→ノーズダイブ有無→株式購入日(株価指数)→株価の底(株価指数)→乖離率
1969年8月14日→無し→1970年5月4日(79.37)→1970年5月26日(69.29)→14.55%
1973年7月27日→有り→1974年9月27日(64.94)→1974年10月3日(62.28)→4.27%
1979年3月1日→有り→1980年6月25日(116.72)→1980年3月27日(98.22)→18.84%
1980年12月19日→無し→1982年1月18日(117.22)→1982年8月12日(102.42)→14.45%
1989年8月9日→有り→1990年9月17日(317.77)→1990年10月11日(295.46)→7.55%
2000年9月11日→有り→2002年11月7日(902.65)→2002年10月9日(776.76)→16.21%
2006年9月21日→有り→2009年3月19日(784.04)→2009年3月9日(676.53)→15.89%

平均乖離率:13.11%
標準偏差:4.83

上記のように、平均乖離率が15%未満で、バラツキも小さいので、パフォーマンスとしては良好と言えます。

次回からは、これまでに定義した逆イールドとノーズダイブのロジックを使って、1970年代以降の株式の売買を長期的に時系列でシミュレートして、40年間のパフォーマンスを測定してみます。