米国の所得収支が初めての赤字転落

現在、米国は経常赤字をファイナンスするために、年間8800億ドル(約100兆円)の海外からの債券購入が必要となっています。主な購入資金は、中国や日本などの政府外貨準備、欧州、中東、日本などの企業や個人マネーです。

これらの海外マネーが米国に還流していた理由の一つは、米国企業の対外投資による所得収支の黒字でした。しかし、米国の債務の膨張は、既に対外投資収益の黒字で支えられる段階を過ぎており、ついに、2006年から米国の所得収支は赤字になりました。

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2006年の米所得収支、初めて赤字転落=「債務国の重荷」背負う
3月15日15時0分配信 時事通信

 【ワシントン15日時事】米商務省が14日発表した2006年の経常収支統計で、米企業・個人の外国投資の収益から、外国企業・個人の対米投資の収益を差し引いた所得収支が初めて赤字に転落したことが明らかになった。
 06年の所得収支は72億6600万ドルの赤字。05年は112億9300万ドルの黒字で、米投資ファンドなどが邦銀への投資で多大な収益を上げた03年には過去最高の365億9300万ドルの黒字を計上していた。
 赤字転落の主因は、05年末で2兆7000億ドル程度に膨らんだ米国の対外純債務。日本と中国だけで計1兆ドルの米国債保有しており、対外利払いもかさんでいる。これまでは、高水準の対外純債務にもかかわらず、米企業・個人の対外投資の収益性が高いため黒字を保ってきたが、対外投資で補いきれない規模に債務が膨らんできたことを意味する。
 対外純債務は拡大を続けており、エコノミストらは米所得収支の赤字傾向が続くとみている。06年で国内総生産GDP)の6.5%に達した経常赤字を圧縮するためには、これまで以上に貿易赤字の縮小に努める必要がある。
 日本では05年度に、所得収支の黒字額が初めて貿易黒字額を上回ったが、「投資立国」の日本とは対照的に、米国は今後「債務国の重荷」を背負っていくことになる。 
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このように、米国の双子の赤字は、海外からのファイナンスが不可能な段階に入ったと言えます。歴史的に、多くの大国が純債務国に転落すると急速に基軸通貨の地位を失ったのと同様に、今後、中長期的に米国は米ドルに対する大きな下落圧力に晒されるものと思われます。