サウジアラビア ガワール油田の生産予測

サウジアラビアのガワール油田は、日量500万バレルの原油を生産する世界最大の油田であり、既に、60年近くの生産を続けた今でも、サウジアラビア原油生産量の60%を占めています。もし、ガワール油田の生産量減少が明らかになった場合、原油価格の上昇を通じて世界経済に大きな影響を与えます。

ガワール油田の含水率を調べた石油技術者学会(Society of Petroleum Engineers )などの公開情報に基づいて、ノルウェーのエネルギー石油資源探査の専門家のEuan Mearns氏が、2006年時点でのガワール油田の減退率と将来の総生産量の減少時期を、二つのシナリオで試算しています。
http://europe.theoildrum.com/node/2507

【基本ケース】
既生産量:698億バレル
残量:270億バレル
減退率:72%
総生産量の減少:2007年より
総生産量の急減:2010年より

【最大ケース】
既生産量:792億バレル
残量:355億バレル
減退率:69%
総生産量の減少:2011年より
総生産量の急減:2014年より

基本ケースは、一般的な前提に立っての試算結果で、最大ケースは、最も楽観的な前提に立っての試算結果です。いずれのケースでも、既に減退率が7割前後に達していることが注目されます。

Euan Mearns氏の意見をまとめると以下のとおりです。
1.ガワール油田は、西側の商業油田に比べると、非常に良く管理されているために、減退率が65%を超えても、生産量は安定して維持されている。
2.しかし、ガワールの多くの地域で、2010年から2013年に一斉に生産量が急減することが最大の問題である。
3.サウジアラビア全体では、Khursaniyah (天然ガス), Shaybah拡張 、Khurais などの新規油田開発によって、2013年までは生産量が拡大される。

2006年の秋以降、サウジアラビアのリグカウントが急増していることから、サウジ政府は新規油田開発を本格的に進めていることが推測されます。しかし、現時点でも、サウジの生産量は、約7%の減少傾向にあって、今後、新規油田を追加したとしても、日量900万バレルまで回復するのが、精一杯ではないかと私は思います。2010年から2014年の比較的に早い時期に、サウジの原油生産について最初の危機が発生すると私は考えています。