1.前回のまとめ
前回は、日本の景気後退を予測する上で重要な先行指標として、新設住宅着工戸数について、調べてきました。
今回は、さらに、その新設住宅着工戸数の先行指標である、住宅メーカーの受注速報について、調べてみます。
2.住宅メーカーの受注速報
受注速報の対象範囲は、各社によって異なるのですが、全社に共通して、注文住宅の金額ベースの前年同月比が公開されているので、これを、比較することによって、住宅用不動産の販売動向を早期に把握することが可能です。
以下に、大手住宅メーカーの受注速報の統計としての利点と欠点を挙げてみました。
【利点】
・即時性が高い
各社ともに、住宅の受注があった翌月の半ばまでには、最新のデータを公開しているので、非常に即時性が高いと言えます。
・新設住宅着工戸数に先行する
国土交通省では、建築申請が提出された月の翌月の末日に、新設住宅着工戸数にカウントするため、住宅メーカーの受注速報は、少なくとも、半月は、先行することになります。
【欠点】
・網羅する範囲が小さい
日本の全体の住宅市場における上場住宅メーカーが占める割合は、非常に小さいため、全体を表した数字ではない事に留意する必要があります。
・データの精度が高くない
受注速報の数値は、キャンセルの発生や集計時の誤りによって、事後的に、訂正されます。従って、データの精度において、ある程度の問題を含むと考えるべきです。
・ノイズが大きい
1社における受注件数のオーダーが、小さいこと、季節性が大きいこと、また、経営上、恣意的に受注月をずらすことも考えられるため、月単位のばらつき(ノイズ)が大きいと言えます。
このように、幾つかの欠点がありますが、住宅メーカーの受注速報は、住宅不動産市場の動向をタイムリーに把握し、新設住宅着工戸数の先行指標として利用する上で、フォローすべき統計値であると言えます。
3.積水ハウスの受注速報の例
以下のグラフは、積水ハウスの受注速報の2005年2月からの推移です。(前年同月比)
このように、非常にノイズが大きいので、12ヶ月の累計比を求めて、プロットすると以下のようになります。
注目すべき点は、景気後退の約2年前の2006年9月にピークアウトして、景気後退の約8ヶ月前の2007年9月には、12ヶ月累計比が0%に落ち込んでいることです。
景気後退入りを強く示唆していると思われます。
発表時期を考慮すると、2006年10月の半ばには、新設住宅着工戸数のピークアウトを予測できた可能性があります。
4.まとめ
住宅メーカーが発表している受注速報は、国土交通省が発表している新設住宅着工戸数に数ヶ月、先行すると考えられます。
しかし、1社のみのデータでは、信頼性に欠ける面があるので、複数の会社のデータから総合的に判断する必要があります。