JPECレポート オーランチキトリウムと藻類研究の最前線

石油エネルギー技術センター(JPEC)が、微細藻類を用いたバイオ燃料の開発状況について、レポートしています。


日米の最新の研究内容が、網羅的に分かり易く解説されており、バイオ燃料に興味のある方には、一読の価値はあると思います。

・米国では、DOEがバイオ・リファイナリープロジェクトに積極的に資金支援を行っており、藻類バイオ燃料に関しては3プロジェクトが適用対象になっている。

(1) Sapphire社・・・コア技術は塩分を含む水で栄養剤を用いながら油分を多く含む藻類の栽培と収穫を行うことである。残留固形バイオマスはバイオリファイナリーのエネルギー源として嫌気性消化プロセスによりメタンガスの製造に用いられ、一部は栄養剤として栽培池に戻される。

(2) Algenol社・・・同社のプロセスも、原料として食用穀物等を用いず、農業用地や耕作可能地を必要とせず、且つ、淡水を使わないことを特長としている。

(3) Solazyme社・・・同社の技術は一般的な培養容器内で藻類を成長させることに特徴があり、栄養物としては、幅広いバイオマスからの糖類や他の藻類を用いて光合成で得られた糖類を用いることが可能である。

・日本では一部パイロット段階に進んだ藻類バイオ燃料プロジェクトが報告されているが、研究開発段階のものが殆どであり、検討している藻類も大きく3種類に分けられる。

(1) オーランチオキトリウム

特徴は、これまで日本国内で主に検討され有力とされてきたボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii、以下ボトリオコッカスと略す)と比較して増殖スピードが適切な温度環境下では36倍と速く、オイル生産効率は単純計算でボトリオコッカスの10倍以上となるため、将来有望な藻類バイオ燃料として最近もマスコミに取り上げられて大きな話題となっている。

オーランチオキトリウムを用いて油脂の生産を行うには、収穫収量の数倍の飼料を与えることが必要であるが、Solazyme社のプロセスと同様に栄養物としては幅広いバイオマスからの糖類や光合成で得られた糖類を用いることが可能である。

(2) シュードコリシスチス(Pseudochoricystis ellipsoidea)

5μm程度の緑色単細胞植物で軽油産出微細藻と言われており、海洋バイオテクノロジー研究所の藏野憲秀氏らが2005年に温泉地から発見したもの。
シュードコリシスチスは、光合成により二酸化炭素を吸収して増殖するが、窒素が不足すると軽油の主成分と同じ炭化水素を成分とする油を作り細胞内に蓄積する特長を持っている。また、重量の最大3割が軽油留分となり、残渣からバイオエタノール燃料も製造できることから、地球温暖化対策に貢献できる藻として注目されている。


淡水に生息する藻類で、緑色~赤色で30~500μmのコロニーを形成する。光合成により炭化水素を生産し、細胞内およびコロニー内部に乾燥重量の20~75%の炭化水素を蓄積する。
筑波大の報告では、植物油の中でも生産性が高いパーム油と比較して3倍以上の高い生産性である。

・ほとんどのプロジェクトは光合成を行う藻類を採用して取り組みを行っているが、一部の企業が生産性の高さから従属栄養型の藻類を採用している。

・広大な土地の確保が困難な日本においては、成長の速く単位面積当たりの収量が多い従属栄養型藻類が大きな可能性を持つと考えられる。

・従属栄養型の藻類では一般的な発酵タンクを用いて培養を行うが、オーランチオキトリウムの場合は培養温度が15℃なら6時間、20℃なら4時間で倍に増えると報告されており、石油精製会社にとっても、「製油所内に浄水および海水の温排水が多量に存在し温度管理が容易」、「生成したバイオ燃料の改質およ
び精製に従来技術を適用出来る」、「製品の貯蔵や配送に既存の設備が使える」、「光合成藻類と組み合わせる場合は水素製造装置からのCO2を原料として使用可能」など、多くのメリットが考えられる。

バイオ燃料だけでなく高付加価値の不飽和脂肪酸の併産なども可能であり、事業の組み立てが重要になると考えられる。

以上