検証システム 第44回 長期40年シミュレーション 混合戦術


前回、インフレ時において、景気循環に関わらず名目の資産価値の上昇が発生する結果、逆イールド/ノーズタイブ戦術の有効性が低下することが分かりました。

今回は、Buy&Hold戦術と逆イールド/ノーズタイブ戦術を、インフレ時とそれ以外の時で、使い分ける混合戦術を検討してみます。

1.前提条件

移動平均金利の逆イールドを検知した場合、これまでは、無条件に半年間をかけて、ロングポジションをショートポジション切り替えましたが、今回は、その前に直近のCPIの伸び率を判定します。

●インフレ時

直近のCPIの伸び率が前年同月比で、8%以上の場合は、インフレ下にあると判断して、ロングカバーとショートポジションの構築を行いません。

その後、景気後退が発生し、さらに、次の景気回復期に入った時点で、再び、逆イールドの検知体制に入ります。

●インフレ時以外

直近のCPIの伸び率が前年同月比で、8%未満の場合は、インフレ以外であると判断して、これまでどおりに、ロングカバーとショートポジションの構築を行います。

2.長期シミュレート結果

上の前提条件で、40年間の長期シミュレートを行った結果は以下の通りです。

取引→年利率(単利)→資金残高
1.1969年ショート →△30.39%→114.28
2.1970年ロング  →△ 8.60%→145.41
3.1973年ショート →△48.93%→228.43
4.1974年ロング  →△24.31%→1,052.27
5.1989年ショート →△ 9.95%→1,165.74
6.1990年ロング →△27.35%→4,353.80
7.2000年ショート→△23.64%→6,583.77
8.2002年ロング →△12.68%→9,785.05
9.2006年ショート→△27.26%→16,452.50
10.2009年のロング→△46.65%→22,208.89

上のように、前回の取引にあった1979年と1980年のショートポジションが、CPIが8%未満という条件を入れたことで、除外されました。

以下は、各ショートポジションの直近月とその時点でのCPI伸び率(前年同月比)の一覧です。
1969年ショート →1969年7月→5.44%
1973年ショート →1973年7月→6.00%
1979年ショート →1979年2月→9.86%・・・8%以上で回避
1980年ショート →1980年11月→12.65%・・・8%以上で回避
1989年ショート →1989年7月→4.98%
2000年ショート →2000年8月→3.41%
2006年ショート →2006年8月→3.82%


3.実質年利(複利・名目)の計算

長期シミュレート結果から、実質年率を求めると以下のとおりです。

当初元本:93.07
最終残高:22,208.89
期間:40.5年

混合戦略の実質年利(複利・名目):14.57%

4.実質年利(複利・実質)の計算

長期シミュレート結果から、物価上昇分を控除して、実質年率を求めると以下のとおりです。

当初元本:93.07
最終残高:21,758.76
期間:40.5年

混合戦略の実質年利(複利・実質):14.51%


5.年代別の実質年利

上の実質年利(実質)を年代別に分けて求めると以下のようになります。

1969年~1974年・・・15.57%(19.32%)
1974年~1989年・・・10.30%(10.85%)
1989年~2000年・・・15.25%(13.67%)
2000年~2010年・・・20.06%(19.26%)

括弧内は名目

6.結果分析

逆イールド/ノーズタイブ戦術を全期間に渡って適用した場合の実質年利は、13.88%でしたので、混合戦術では、0.63%(=14.51%-13.88%)だけ年利が高いことになります。

その差が僅かだった理由は、逆イールド/ノーズタイブ戦術で、損失となっていた1979年のショートポジションと、利益となっていた1980年のショートポジションの両方が、混合戦術で回避され、損失と利益が相殺されたからです。

この結果、インフレ時は、逆イールド/ノーズタイブ戦術とBuy&Hold戦術のパフォーマンスは、ほぼ、同程度で、後者がやや優ると言えます。

次回は、直近月のCPI伸び率では無く、数ヶ月間のCPI伸び率のトレンドからインフレの傾向を判断して、取引する方法を検討することにします。