前回は、戦争発生による需要追加、ならびに、既発債と変動利付債との金利差を考慮することによって、90日移動平均の金利から求めた逆イールドが、景気後退の先行指標として、さらに有効になることを確認しました。
先ず、90日移動平均を計算することによって発生する、逆イールドの検出の遅れがどの程度、影響するかを調べます。
注)以下の記述の中で、株価と呼んでいるのは、米国株式のS&P500指数のことです。
景気の山→日次金利での逆イールド→移動平均金利での逆イールド→月数差
1990年7月→1989年2月1日→1989年8月9日→+6ヶ月
2001年3月→2000年4月7日→2000年9月8日→+5ヶ月
2007年12月→2006年7月17日→2006年9月21日→+2ヶ月
1990年7月→1989年2月1日→1989年8月9日→+6ヶ月
2001年3月→2000年4月7日→2000年9月8日→+5ヶ月
2007年12月→2006年7月17日→2006年9月21日→+2ヶ月
月数差の平均:+4.3ヶ月
ノイズを数学的に消すために、90日移動平均を計算しているので、日次の逆イールド検知から、平均で4ヶ月程度の遅れが出ます。
株価のピーク→移動平均金利での逆イールド→月数差
1990年7月16日→1989年8月9日→+11ヶ月
2000年3月24日→2000年9月8日→-5ヶ月
2007年10月9日→2006年9月21日→+11ヶ月
1990年7月16日→1989年8月9日→+11ヶ月
2000年3月24日→2000年9月8日→-5ヶ月
2007年10月9日→2006年9月21日→+11ヶ月
月数差の平均:+5.7ヶ月
3.株式売却のパフォーマンス比較
ピンポイントでの予測が難しいので、逆イールドを検知した日を起点に、2Qから4Q後までの期間で、それぞれ、平均的に売却した場合の、ピークの株価からの乖離率の平均と標準偏差を求めます。
また、参考のために、即日に売却した場合の乖離率の平均と標準偏差を、最後に求めました。
【2Q】
起点→終点→単純平均→株価のピーク→乖離率
1989年8月9日→1990年2月8日→344.2→368.95→-6.7%
2000年9月8日→2001年3月7日→1358.9→1527.4→-11.0%
2006年9月21日→2007年3月20日→1400.3→1565.1→-10.5%
起点→終点→単純平均→株価のピーク→乖離率
1989年8月9日→1990年2月8日→344.2→368.95→-6.7%
2000年9月8日→2001年3月7日→1358.9→1527.4→-11.0%
2006年9月21日→2007年3月20日→1400.3→1565.1→-10.5%
【3Q】
起点→終点→単純平均→株価のピーク→乖離率
1989年8月9日→1990年5月8日→341.7→368.95→-7.4%
2000年9月8日→2001年6月7日→1310.9→1527.4→-14.2%
2006年9月21日→2007年6月20日→1430.3→1565.1→-8.6%
起点→終点→単純平均→株価のピーク→乖離率
1989年8月9日→1990年5月8日→341.7→368.95→-7.4%
2000年9月8日→2001年6月7日→1310.9→1527.4→-14.2%
2006年9月21日→2007年6月20日→1430.3→1565.1→-8.6%
【4Q】
起点→終点→単純平均→株価のピーク→乖離率
1989年8月9日→1990年8月8日→345.7→368.95→-6.3%
2000年9月8日→2001年9月7日→1281.6→1527.4→-16.1%
2006年9月21日→2007年9月20日→1444.9→1565.1→-7.7%
起点→終点→単純平均→株価のピーク→乖離率
1989年8月9日→1990年8月8日→345.7→368.95→-6.3%
2000年9月8日→2001年9月7日→1281.6→1527.4→-16.1%
2006年9月21日→2007年9月20日→1444.9→1565.1→-7.7%
【即日】
株価→株価のピーク→乖離率
346.94→368.95→-6.0%
1494.5→1527.4→-2.1%
1318.03→1565.1→-15.8%
株価→株価のピーク→乖離率
346.94→368.95→-6.0%
1494.5→1527.4→-2.1%
1318.03→1565.1→-15.8%
【乖離率の平均値(絶対値)と標準偏差】
期間→平均値(絶対値)→標準偏差・・・評価
2Q→9.4%→1.92・・・乖離率の平均(絶対値)は二番目に低く、バラツキも小さい。
3Q→10.1%→2.96・・・乖離率の平均(絶対値)が最も高い。
4Q→10.0%→4.33・・・乖離率の平均(絶対値)が二番目に高く、バラツキも二番目に高い。
即日→8.0%→5.74・・・乖離率の平均(絶対値)は低いがバラツキが大きい。
期間→平均値(絶対値)→標準偏差・・・評価
2Q→9.4%→1.92・・・乖離率の平均(絶対値)は二番目に低く、バラツキも小さい。
3Q→10.1%→2.96・・・乖離率の平均(絶対値)が最も高い。
4Q→10.0%→4.33・・・乖離率の平均(絶対値)が二番目に高く、バラツキも二番目に高い。
即日→8.0%→5.74・・・乖離率の平均(絶対値)は低いがバラツキが大きい。
上記のように、2Qに渡って売却するのが、乖離率が小さく、バラツキも少ないので、最もパフォーマンスが良いと思います。
このように、移動平均を計算することによって、逆イールドの検出が、日次の金利よりも遅くなりますが、株式売却の期間を4Qから2Qに短縮することによって、以前に計算した日次金利によるパフォーマンスと変らないパフォーマンスが得られました。
4.まとめ
逆イールドを検知した日から、2Q(半年)に渡って、平均的に売却した場合、以下のパフォーマンスでの売却が可能となります。