商品循環 第54回 マネタリーベースの推移を比較する

【直近の履歴】
第53回 1950年の金融政策を振り返る
第52回 長期金利のボトムでの商品価格高騰のメカニズム
第51回 長期金利と商品循環の関係

前回までに、1950年前後の長期金利のボトムでの商品価格高騰のメカニズムを、金融政策との関連で調べてきました。

今回は、各商品循環のピークにおけるマネタリーベースの推移に注目して、資金の流れと商品価格高騰の関係を考えてみます。

1.1947年の商品循環のピーク・・・1937年~1949年のマネタリーベースの推移

下のグラフのように、FRBは、1937年から1947年にかけて、マネタリーベースを、約3.5倍に拡大させています。

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これは、長期金利が60年周期の最低水準にあったため、FRBによる大胆な金融緩和が可能となり、米国債FRB引き受けなどの金融緩和措置が行われた結果だと考えられます。

1947年の商品循環ピーク時には、上のようにして拡大したベースマネーの一部が、商品に流れ込んでいたことが、想像されます。

以下は、商品循環のピークまでの10年間に、マネタリーベースと名目GDPがどの程度拡大したかを計算したものです。

【マネタリーベース】
1937年3月(A)・・・9.609 ←商品循環のピークの10年前
1947年3月(B)・・・33.282 ←商品循環のピーク
単位:10億ドル

B÷A=3.46(倍)

【名目GDP】
1937年(C)・・・91.9 ←商品循環のピークの10年前
1947年(D)・・・244.1 ←商品循環のピーク
単位:10億ドル

D÷C=2.65(倍)

このように、この期間における名目成長率の伸びを大きく上回るペースで、ベースマネーが供給されていたことが分かります。

2.1980年の商品循環のピーク・・・1970年~1983年のマネタリーベースの推移

下のグラフのように、1970年から1983年にかけては、マネタリーベースの伸び率は、ほぼ、一定でした。

イメージ 2

この期間では、長期金利が60年周期の最高水準にあったため、インフレ懸念が強く、FRBによる大胆な金融緩和が不可能だったことが、このような結果になったと考えられます。

【マネタリーベース】
1970年2月(A)・・・61.920 ←商品循環のピークの10年前
1980年2月(B)・・・131.469 ←商品循環のピーク
単位:10億ドル

B÷A=2.12(倍)

【名目GDP】
1970年1Q(C)・・・1017.1 ←商品循環のピークの10年前
1980年1Q(D)・・・2724.1 ←商品循環のピーク
単位:10億ドル

D÷C=2.67(倍)

このように、この期間における、ベースマネーの伸び率は、名目成長率の伸びを、やや、上回る程度であり、実質成長率では、ほぼ、同程度であったと推定されます。

3.現在(2011年)の状況・・・2001年~2011年のマネタリーベースの推移

下のグラフのように、FRBは、2001年から2011年にかけて、マネタリーベースを、約4倍に拡大させています。

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これは、長期金利が60年周期の最低水準にあったため、FRBによる大胆な金融緩和が可能となり、米国債FRB買い入れや量的緩和措置などの金融緩和措置が行われた結果です。

【マネタリーベース】
2001年10月末(A)・・・664.004 ←商品循環のピークの10年前
2011年10月19日(B)・・・2698.852 ←商品循環のピーク
単位:10億ドル

B÷A=4.06(倍)

【名目GDP】
2001年3Q(C)・・・10305.2 ←商品循環のピークの10年前
2011年3Q(D)・・・15198.6 ←商品循環のピーク
単位:10億ドル

D÷C=1.47(倍)

このように、現在、名目成長率の伸びを大きく上回るペースで、ベースマネーが供給されていることが分かります。

4.まとめ

以上のような結果をまとめると、以下の仮定が成り立ちそうです。

・60年周期の長期金利のピークでは、債券が売られ、そのマネーが直接、商品に流れ込んで、価格を押し上げる。
・60年周期の長期金利のボトムでは、中央銀行FRB)が、成長率を上回るペースで、ベースマネーを大幅に拡大し、その人為的に作られたマネーの一部が、商品に流れ込んで、価格を押し上げる。

上のような仮定は、長期金利のピークにおいて、長期金利と商品循環のピークが、ほぼ、同時期に、明確に表れる理由が、直接的なマネーフローにあるとして、うまく、説明出来ます。

また、長期金利のボトムにおいて、商品循環のピークがやや時期的に乖離し、ピークの形もやや不明瞭になる理由が、人為的に作られたマネーフローにあるとすると、うまく、説明が付きます。

次回は、各商品循環のピークでの、PPIとCPIの伸びをグラフ化して、比較分析してみようと考えています。