【直近の履歴】
第34回 商品循環とCPIの関係を一般化する
第33回 1910年代~1930年代のCPI
第32回 1940年代~1950年代のCPI
今回は、長期的なCPIと景気循環及び株価との関係を調べてみます。
1.景気循環と株価の関係
以下のデータは、第28回 1929年以降の景気循環と株価の変化で調べた内容に基づいて、米国の景気循環と株価の関係を整理したものです。
景気区分→期日→株価変化率→一致有無
△ 1929年8月
▼ 1933年3月 -85.43% ○
△ 1937年5月 215.36% ○
▼ 1938年6月 -23.37% ○
△ 1945年2月 19.81% ○
▼ 1945年10月 16.33% ×
△ 1948年11月 -6.35% ×
▼ 1949年10月 8.46% ×
△ 1953年7月 45.29% ○
▼ 1954年5月 18.92% ×
△ 1957年8月 47.90% ○
▼ 1958年4月 -5.88% ○
△ 1960年4月 31.99% ○
▼ 1961年2月 10.03% ×
△ 1969年12月 20.89% ○
▼ 1970年11月 -0.78% ○
△ 1973年11月 3.55% ○
▼ 1975年3月 -6.58% ○
△ 1980年1月 14.02% ○
▼ 1980年7月 6.79% ×
△ 1981年7月 1.82% ○
▼ 1982年11月 9.13% ×
△ 1990年7月 179.54% ○
▼ 1991年3月 0.30% ×
△ 2001年3月 239.03% ○
▼ 2001年11月 -0.28% ○
△ 2007年12月 34.65% ○
▼ 2009年6月 -36.32% ○
ここで、△が景気のピーク、▼が景気のボトムで、百分率は、各期間での株価(ダウ平均)との変化率です。
右端の○と×は、景気循環と株価の変化が一致していれば、○、不一致であれば、×を付しています。
例えば、景気後退局面で株価が、下がっていれば、○、上がっていれば、×となり、景気拡大局面では、その逆となります。
1940年代に、景気と株価の不一致が目立ちますが、1960年代、1980年代にも、同様の期間が散見され、全体的には、明確な傾向は見えません。
2.景気循環と株価およびインフレの関係
ここで、上のデータに、各期間のCPIとインフレの有無を記すと以下のようになります。
景気区分→期日→株価変化率→一致有無→CPI→インフレ識別
△ 1929年8月
▼ 1933年3月 -85.43% ○ -6.52% デフレ
△ 1937年5月 215.36% ○ 2.15%
▼ 1938年6月 -23.37% ○ 1.96%
△ 1945年2月 19.81% ○ 3.22%
▼ 1945年10月 16.33% × 2.28%
△ 1948年11月 -6.35% × 9.83% インフレ
▼ 1949年10月 8.46% × 0.01%
△ 1953年7月 45.29% ○ 2.92%
▼ 1954年5月 18.92% × 0.89%
△ 1957年8月 47.90% ○ 1.05%
▼ 1958年4月 -5.88% ○ 3.34%
△ 1960年4月 31.99% ○ 1.63%
▼ 1961年2月 10.03% × 1.46%
△ 1969年12月 20.89% ○ 2.44%
▼ 1970年11月 -0.78% ○ 5.89%
△ 1973年11月 3.55% ○ 4.52%
▼ 1975年3月 -6.58% ○ 10.74% インフレ
△ 1980年1月 14.02% ○ 8.04% インフレ
▼ 1980年7月 6.79% × 14.21% インフレ
△ 1981年7月 1.82% ○ 11.57% インフレ
▼ 1982年11月 9.13% × 7.72% インフレ
△ 1990年7月 179.54% ○ 3.75%
▼ 1991年3月 0.30% × 5.68%
△ 2001年3月 239.03% ○ 2.77%
▼ 2001年11月 -0.28% ○ 2.80%
△ 2007年12月 34.65% ○ 2.64%
▼ 2009年6月 -36.32% ○ 2.46%
CPIは、各期間のCPI(消費者物価指数)の前年同月比の平均値を取りました。
また、インフレ識別は、CPIがマイナスの時は、「デフレ」、CPIが7%を超えている時に、「インフレ」と表示しました。
6回のインフレの期間のうち、3回で、景気と株価が一致しないことが分かります。
しかし、他には、明確なトレンドは見つかりません。
3.景気循環とインフレおよび投資パフォーマンスの関係
上のデータに、さらに、各期間での株式投資のパフォーマンスを記すと、以下のようになります。
景気区分→期日→株価変化率→一致有無→CPI→インフレ有無→投資パフォーマンス
△ 1929年8月
▼ 1933年3月 -85.43% ○ -6.52% デフレ ◎
△ 1937年5月 215.36% ○ 2.15% ◎
▼ 1938年6月 -23.37% ○ 1.96% ◎
△ 1945年2月 19.81% ○ 3.22% ◎
▼ 1945年10月 16.33% × 2.28%
△ 1948年11月 -6.35% × 9.83% インフレ
▼ 1949年10月 8.46% × 0.01%
△ 1953年7月 45.29% ○ 2.92% ◎
▼ 1954年5月 18.92% × 0.89%
△ 1957年8月 47.90% ○ 1.05% ◎
▼ 1958年4月 -5.88% ○ 3.34%
△ 1960年4月 31.99% ○ 1.63% ◎
▼ 1961年2月 10.03% × 1.46%
△ 1969年12月 20.89% ○ 2.44% ◎
▼ 1970年11月 -0.78% ○ 5.89%
△ 1973年11月 3.55% ○ 4.52%
▼ 1975年3月 -6.58% ○ 10.74% インフレ
△ 1980年1月 14.02% ○ 8.04% インフレ
▼ 1980年7月 6.79% × 14.21% インフレ
△ 1981年7月 1.82% ○ 11.57% インフレ
▼ 1982年11月 9.13% × 7.72% インフレ
△ 1990年7月 179.54% ○ 3.75% ◎
▼ 1991年3月 0.30% × 5.68%
△ 2001年3月 239.03% ○ 2.77% ◎
▼ 2001年11月 -0.28% ○ 2.80%
△ 2007年12月 34.65% ○ 2.64% ◎
▼ 2009年6月 -36.32% ○ 2.46% ◎
ここで、景気循環と株価の変化が一致して、さらに、株価の変化率の絶対値が20%以上の場合に、投資パフォーマンスが良好であるという意味で、右端に◎を記しました。
【例】
・1933年3月から1937年5月・・・景気の後退期で、株価が85%下落しているので、この期間で、株価をショートしていれば、20%以上の利益となります。従って、投資パフォーマンスとしては、良好と言えるので、◎を記しています。
・1945年10月から1948年11月・・・景気の拡大期にも関わらず、株価は下落しているので、株価をロングしても、損失となるため、パフォーマンスが良好とは言えません。従って、◎は記していません。
・1970年11月から1973年11月・・・景気の拡大期で、株価は上昇していますが、変化率が20%を大きく下回っているので、パフォーマンスが良好とは言えません。従って、◎は記していません。
上のデータから分かるのは、◎が記されている(株式投資の良好なパフォーマンスが得られた)期間には、インフレは無く、インフレが記されている期間には、◎が無く、株式投資のパフォーマンスが低いという傾向があることです。
また、長期的なインフレの期間(1948年や1970年代後半~1980年代初頭)は、商品循環のピークとほぼ一致しています。
従って、商品の強気相場では、株式投資のパフォーマンスは、ロングばかりではなくショートでも、良好な結果が得られないと言えます。
さらに、1948年と比べて、1970年代後半~1980年代初頭のインフレの期間が非常に長かったと言えます。
これは、1980年が60年周期の債券循環のボトムに当たり、債券が売られた事が、インフレを長期化したと予想されます。
4.まとめ
今回の結果をまとめると、以下のようになります。
・長期的なインフレの期間は、商品循環の強気相場と一致する。
・商品循環の強気相場において、景気循環に沿った株式投資を行った場合のパフォーマンスは、ロング・ショートともに、他の期間と比べて、相対的に低いという傾向がある。
しかし、この結論は、以前に導き出した以下の結論と、少し、整合性に欠けるように思えます。
・商品の強気相場においても、株式投資は、商品投資と同程度のパフォーマンスが得られ、特に、景気後退期は、株式をショートした方が、良いパフォーマンスが得られる。
次回は、この結論の違いを詳細に分析してみることにします。