商品循環 第12回 1859年から1899年の原油価格

【直近の履歴】
第11回 商品循環のピークにおけるPPIの振る舞い
第10回 1920年ピーク時のPPI
第9回 1951年ピーク時のPPI

今回は、予定を変更して、1920年以前の原油価格について、述べたいと思います。

EconbrowserのJames D. Hamilton氏が、1月15日の記事(Oil shocks and economic recessions)で、米国の過去の原油価格の高騰について調べた結果をアップしていました。
詳細なレポート(PDF)は、History of Oil Shocks です。

このレポートには、PPIのデータが残っていない1920年以前の原油価格の高騰について、詳細な記述があり、過去の商品循環を知る上で、貴重な資料だと思います。

従って、予定を変更して、過去の原油価格の推移を分析することにしました。

1.1859年~1860年 石油の利用が始まる

1859年までは、ランプなどに使われる油は、鯨油や植物油が主流でしたが、1859年に石油から商業的に利用可能な量の油を精製する技術が確立して、石油の利用価値が広がりました。

それまで、石油は非常に価値が高く、1859年の価格は、1バレル80ドル(2009年のドル換算で、1バレル1900ドル)でした。

しかし、原油掘削技術の確立で、生産量が増えて、1860年の価格は、1バレル9.6ドル(2009年のドル換算で、1バレル228ドル)と急速に価格が低下しました。

さらに、1861年末には、1バレル10セントまで、価格が暴落しました。

2.1862年~1864年 史上初のオイルショック

原油価格の急落で、多くの掘削が停止し、1962年から原油の生産量が減少したところに、米国では南北戦争が始まり、原油への需要が急速に高まりました。

原油価格は、急騰して、1バレル2ドルを付けました。

この時の原油価格の上昇幅は、1970年代とほぼ同じだと考えられます。

3.1865年~1899年 技術革新

南北戦争後に原油の需要は急減し、ペンシルベニアの新しい油田からの生産が始まり、原油の供給量は急回復しました。
その結果、1866年に原油価格は急落しました。
1890年までにペンシルベニアの油田からの生産量は、1870年の5倍に膨らみ、他州の生産も38%増え、ロシアも米国と同等の生産を開始しました。

これらの要因と1890年から1892年の景気後退によって、原油価格は、1892年までに1バレル56セントまで下落しました。

しかし、この頃になると、ペンシルベニアでの原油生産は容易ではなくなり、1891年から1894年に年間1400万バレルでピークアウトし、二次回収技術を適用しても、以降、1891年の水準を回復することはありませんでした。

さらに、1894年にロシアのバクーで発生したコレラの流行で、ロシアからの原油輸入が減少したことによって、1895年に原油価格は急騰しました。

4.原油価格の推移

下のグラフは、1860年から2009年までのインフレ調整後の原油価格の自然対数を取って、プロットしたものです。(2009年の米ドル基準)イメージ 1

1860年当時、稀少で高価だった石油が、商業生産が始まると価格が急落し、南北戦争によって、再び急騰しています。
この時の上昇幅が、1970年から1980年とほぼ同じである事が、グラフからも推察されます。

その後、増産で1890年頃まで、原油価格が下落トレンドにありましたが、1890年を過ぎると再び、価格が高騰し、ダブルトップを形成しています。

5.商品循環との関係

これまで、PPIなどによって、1920年の商品循環のピークまで、遡って、確認出来ました。
さらに、上の原油価格の推移を見ると、その25年前の1895年と、さらに、その33年前の1862年にも、商品循環のピークがあったことが推察されます。

これは、商品循環の1周期が30年とする仮定にも、ほぼ、合致するように思えます。
今後の方針としては、WPI(卸売り物価指数)や穀物価格なども使って、1800年代の商品循環を探っていく予定です。

次回は、今回の続きとして、1920年から1950年にかけての原油価格の推移を、調べてみたいと思います。