2010年(1-7月) 世界のニッケルの需給動向

JOGMECが発表した、2010年1月~7月のニッケルの国際市況と需給動向です。


●上記より引用

2.需給

〈供給・鉱石生産量〉

世界の鉱石生産は、5月が125 千t、6月が127 千tとなり、2009 年12 月より対前月比で増加傾向にある。また、1-6月期は前年同期比でも、7.8%増産の721 千tとなった。カナダの生産はSudbury 鉱山、Voisey's Bay鉱山でのストライキの長期化の影響で2009 年6月から大幅に減産(前年同期比で44%減)となっているが、2010 年1-6月期は、インドネシア(前年同期比19%増)、フィリピン(同95%増、Coral Bay プロジェクトでの増産が寄与していると見られる)、ニューカレドニア(同45%増)での増産がカナダの減産を上回ったため、世界の鉱石生産が増加した。

供給面のニュースとしては、パプアニューギニアのRamu プロジェクト開発工事の中断の継続(7月時点)、2009 年7月から続いていたVale、Sudbury 鉱山でのストライキが約1年をかけようやく終結したこと、6月のフィンランドTalvivaara鉱山での第2生産ライン(年産25 千t規模)の生産開始、8月に入ってのニューカレドニアGoro 鉱山(年産60 千t規模)の生産開始などがある。

〈供給・一次ニッケル生産量〉

世界の生産は、5月が125 千t、6月が121 千tとなり、前年の同時期に比べ高い生産水準にある。1-
6月期は対前年同期比で5.8%増の704 千tとなった。金融危機の前後において、世界生産量に大きな変化はなく、月産110 千t 水準を維持し推移してきたが、2010 年4月以降120 千t水準にある。中国の生産量は、2009 年に入り増加傾向を示し、2009 年4月以降は月産20 千t台を上回る水準で推移しているが、2009 年12月には一時的に28 千tに達し、さらに4月以降30 千t水準にあり、1-6月期は対前年同期比で47%増と大幅な伸びになった。この著しい中国の生産拡大と、景気低迷で2009 年に低水準であった日本の回復(前年同期比24%増)が、ストライキが継続しているカナダの減産(同46%減)を打ち消した。
中国のニッケル一次生産に間接的にではあるが関連する事項としては、粗鋼生産量が6月も月産5,614 万tと過去最高水準を更新し続けている一方で、ステンレスの需要不振と深刻な生産能力過剰にあることがあげられる。
日本では景気回復によりステンレス(特殊鋼)向けの需要の高まりから、ニッケル生産が3 月に過去最高
水準を更新している。6月に入っても9か月連続で前月比増となっている。

〈需要・ニッケル消費量〉

世界の消費は、5月が118 千t、6月が115 千tとなり、3月の121 千tから一旦減少しているが、景気
低迷で底の状態にあった2009 年の同時期に比べると著しい回復を示しており、1-6月期は対前年同期比で21.9%増の699 千tと大幅増になった。消費は金融危機前の2008 年7月の114 千tより減少傾向が始まり、2009 年1月の81 千tを底としてその後回復傾向にある。この間、中国以外の消費は、2008 年前半の80 千t台から2009 年1月の52 千tまで減少し、その後70千t程度まで回復している。これに対して、中国の消費は30 千t程度で大きな落ち込みがなかったものの、2009 年に入ってから40 千t前後まで増加し現在に至っている。中国の著しい増加と、底にあった日本(前年同期比44 % 増)、米国( 同26 % 増)、ドイツ( 同20%増)、韓国(29%増)など主要消費国の軒並みの二桁台の回復により世界消費は大幅増となった。
需要に係わるニュースとしては中国では7月に山東省でニッケル銑鉄生産者の50%近くがステンレス市場
低迷により生産停止し、次いで江蘇省でも生産停止が相次いでいる模様であること、また、日本ではステンレス向けニッケル出荷量が増加を続け、6月には1.4千t/ 月の水準となっている。

〈需給バランス〉

世界の需給バランスは、3月までの供給不足から、4月が1千t、5月が7千t、6月に7千tと供給過
剰となっている。1-6月期では4千tの供給過剰となっている。供給需給バランスは、2009 年6月までの1年間は概ね供給過剰であったが、その後6月から8月にかけて均衡から供給不足となり、その後12 月まで再び供給過剰となっていた。

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2010年のニッケルの需給はほぼバランスしています。