EUにとってクリティカルな原材料

欧州連合委員会が、「EUにとってクリティカルな原材料」を発表しました。


全部で14種類の物質(主に金属)ですが、日本にとっても、同様にクリティカルな原材料が多く、参考になるので、アップすることにしました。

1) アンチモン
・利用先であるフレーム反応減速材に有効な代替物質がない
・最も埋蔵量を有する中国がEUへのメタル供給の大部分を占めることから、量的、価格崩壊のリスクが高い。
・使用先が散逸し、集積困難なため、リサイクルが困難である。
・もしEUアンチモンバリューチェーンが崩壊した場合には、フレーム反応減速材のノウハウが散逸することとなり、これは世界的損失である。

2) ベリリウム
・米国と中国の生産量が世界の99%を占有している。
・リサイクル率が低い。
・代替性については、効率が低く困難である上に、将来の可能性も予測困難である。

3) コバルト
・DRCコンゴが世界生産の大部分を占める。
・一次生産に関する競争分野が一定水準にない。特に中国との競合
・代替可能性が限定されている。

4) 蛍石
EU消費量の25%は域内生産で、その他は輸入であるが、その大部分は輸出規制や輸出税のある中国からの輸入に依存している。
・リサイクル率はEU内では1%以下。
・代替可能性が限定されている。

5) ガリウム
・中国が主な生産国(75%)、EU内ではハンガリースロバキアに少量生産がある。
南アフリカ、中国、ロシアはガリウムに関して貿易制限の対象となっている。
ガリウムは現在スクラップからリサイクルされていない。
・特定の利用先にしかガリウムの代替性はない。

6) ゲルマニウム
・輸入鉱石を精錬しゲルマニウムを輸出するので、EU域内では回収不可。EUは、2009年の世界生産の71%以上を占める中国からの輸入に強く依存している。
・リサイクル率は約30%。

7) グラファイト
EUの95%以上輸入に依存、特に中国がメイン。
・リサイクルは増加したが、非常に限定的である。

8) インジウム
EUの輸入の81%以上は中国からである。
インジウムのリサイクルの可能性は主に製造工程の残渣で限定的であり、代替できるのはわずかな可能性のみである。

9) マグネシウム
EUは、マグネシウム世界生産量の47%を輸入。中国は世界最大のマグネシウム生産者で生産量の93%を占めている。
・中国、ロシア、南アは貿易規制がある。
マグネシウムのリサイクルの可能性は限定的である。

10) ニオブ
EUでは生産しない。92%以上のニオブがブラジル、7%がカナダで生産する。
・総消費量の推定リサイクル率は20%。ニオブの代替可能性はあるが、コスト高で効率が悪い。

11) PGM
EUでは一次生産はない。EUへのPGMの主要ソースは、南アフリカ(約60%)とロシア連邦(30%強)。
・ライフサイクルの特徴として、消費生産物からのPGM回収は限定的である。ヨーロッパ内での自動車触媒に使われているPGMの回収レベルは50%以下にとどまり、電気関係も約10%だけである。
・PGMは複数の元素からなり、しばしばその中で相互の元素が代替されるが、プラチナとパラジウム鉱山生産は同量程度なので、単なるシフトするだけで、代替にならない。

12) レアアース
EUでは生産しない。中国が2009年の世界生産量の97%を産する。さらに、中国のレアアースの輸出制限や割り当てを受ける。
・新規鉱山プロジェクトは、中国以外の国で進行中であるが、鉱山からの生産までには時間的スパンがあるだけでなく、レアアース抽出には多くの付随する困難が伴う。
レアアースの回収プロセスはこれまでも開発されてきたが、現在、商業的規模で明確な技術はない。レアアースの代替の可能性はあるが、効率的ではない。

13) タンタル
・DRCコンゴが生産のほとんど占有している。
・リサイクルが限定的。
・代替が困難で、効率が悪く可能性は予測困難。

14) タングステン
・世界で一番の埋蔵量を有する中国が原料供給(APT、酸化物)を占有していることから、量的にあるいは価格崩壊の高いリスクがある。
タングステンスのクラップマーケットでは、中国の略奪的行動のリスクが増えている。
・代替の可能性は、代替性物質は技術的に効率性が低く環境負荷が高いので、制限がある。
・自動車、宇宙、医療、光源など多くのタングステン製品を開発してきたリーダーとして、EUタングステン付加価値チェーンが崩壊したならば、世界的ノウハウの損失により、重要産業は海外からの輸入に全面的に依存する結果となる。

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EUは、中国、ロシア、南アフリカ、DRコンゴの占有率が高い資源を、クリティカルと考えているようで、これは、日本から見ても妥当であると言えます。
特に、中国は、今後、国内の需要の高まりで、輸出制限をかける可能性が高いので、資源リサイクルや、調達先の多様化、代替資源への転換などの対策が急がれます。