検証システム 第32回 ノーズダイブの検出


今回は、前回、定義した条件に基づいて、過去の景気後退における、ノーズダイブを検出してみます。

1.金利下落トレンド監視の契機

米国の景気後退の先行指標として、90日移動平均金利の逆イールド検知が、最も有効です。(変動利付き債の場合、平均10.7ヶ月先行する。)

今回、短期債金利の下落トレンドの監視を始める契機としても、この、90日移動平均金利の逆イールド検知を用います。

1960年代以降の90日移動平均金利の逆イールド検知は以下のとおりです。

1966年11月4日・・・対象外
1969年8月14日
1973年7月27日
1979年3月1日
1980年12月19日
1989年8月9日
2000年9月11日
2006年9月21日

注)
ベトナム戦争の拡大によって、1966年11月4日の逆イールドは、契機後退を予測できなかった。
・1969年8月14日~1980年12月19日の逆イールド検知において、3ヶ月債の金利は、既発債の金利を適用し、それ以外は、変動利付き債の金利を適用した。

2.抽出条件

逆イールドを検知して、監視期間に入ると、3ヶ月債の日次金利と90日移動平均金利に関して、以下の条件が、成立するかどうかを、毎日、確認・記録します。

●日次金利 - 移動平均金利 < 0

上の条件が連続して、n日間(※)連続した場合に、金利の下落トレンドに入ったと考えます。

※nの値は、以下のように、過去の下落トレンドの通算期間を参考にして決定しました。

逆イールド検知日→下落トレンド開始日→下落トレンド終了日→通算期間
1969年8月14日→1970年2月6日→1970年5月4日→59日
1973年7月27日→1973年11月15日→1974年1月1日→36日
1979年3月1日→1979年6月5日→1979年7月19日→32日
1980年12月19日→1981年9月9日→1982年2月18日→88日
1989年8月9日→1989年4月14日→1990年3月8日→227日
2000年9月11日→2000年11月7日→2002年3月8日→331日
2006年9月21日→2006年8月29日→2008年5月15日→430日

上のように、金利の下落トレンドの通算期間は、最短で32日間ですので、nの値を、30日と決めます。

すなわち、「米国債の3ヶ月債の日次金利が、90日移動平均よりも、30日間以上連続して下回ったときに、短期金利の長期下落トレンドに入った。」と定義します。

また、上のデータから、1980年以前と1989年以降では、通算期間の長さが桁違いである点に、気が付きます。

私の考えでは、1980年以前は、商品の強気相場で、インフレ懸念が強かったため、景気後退局面でも、当局(FRB)は、大胆に金利を引き下げられなかったと考えています。

反対に、1989年以降は、株式の強気相場で、インフレ懸念が弱かったために、金融当局(FRB)は、大胆な金利引下げを行い、金利の下落トレンドが長く続いたと考えています。

注)1989年と2006年は、逆イールドを検知した日に、既に金利の下落トレンドが開始していました。従って、監視開始日から過去に遡って、初めて、上の条件が成立していた日を下落トレンドの開始日として、決定しました。


3.ノーズタイブの検出

金利の下落トレンドは、以下の条件が成立した場合に終了します。

●日次金利 - 移動平均金利 ≧ 0

この時に、金利の下落トレンドの開始日から終了日のデータを全て参照して、日次金利移動平均金利から最も乖離した日(※)を、ノーズダイブ日とします。

※最大乖離日: (日次金利 - 移動平均金利)の絶対値が最大の日

過去のノーズダイブの日は、以下の通りです。

下落トレンド開始日→下落トレンド終了日→ノーズダイブ日
1970年2月6日→1970年5月4日→1970年3月24日
1973年9月21日→1973年11月5日→1973年9月27日
1979年6月5日→1979年7月19日→1979年6月25日
1981年9月9日→1982年1月18日→1981年11月18日
1989年4月14日→1990年3月8日→1989年9月15日
2000年11月7日→2002年3月8日→2001年11月7日
2006年8月29日→2008年5月15日→2008年3月19日

次回からは、上のように決定したノーズダイブと、景気や株価の底との関係性を検証してみます。