米国掘削リグ「Deepwater Horizon」の暴発と沈没についての技術的考察

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JOGMECが、メキシコ湾の原油漏れ事故について、技術面から分析してレポートにまとめています。


これまでの事故の経過と原因の分析、また、今後の石油開発への影響などを、豊富なイラストを交えて、分かり易く丁寧に説明されています。

【想定される事故原因】
・セメントプラグによる坑井内と油層との流動分離が、坑口あるいは坑底で不十分(坑井内の圧力テストが不十分)

・ケーシングパイプあるいは坑口の損傷

・BOPとライザーパイプ下部の緊急時切り離しシステムの不作動

【今回の事故の今後への影響】
・大水深の油・ガス田開発地域は増えており、掘削作業は年々増加。(上の世界地図を参照)

・5月27日に発表された大統領の上流政策の方針は、新規の海洋油ガス田開発を遅らせる。

・短期的にはほとんど影響を受けていないメキシコ湾での石油や天然ガスの生産も、中長期的には掘削や保守の中断や新規プロジェクトの延期から徐々に影響を受ける。

・これらのポイントから、石油・ガス上流業界全体としては、今回米国における暴噴事故の発生、それに端を発した地元住民や環境に甚大な被害をもたらした原油大量流出の惨事に関し、真摯に受け止めることになる。

・しっかりとした原因究明がなされれば、その結果に応じた再発防止に向けて各産油国(米国、ブラジル、ノルウェーなど)の政府とともに技術面でのHSE対策の強化、及び規制面での対策強化を今一度十分に見直す時期にあると考えられる。

・事故の影響からメキシコ湾での石油開発計画が1~2年ほど停滞すると、2015年には現状予測(2009年5月のMMS予測)より、石油生産は10~30万バレル/日ほど下回ることとなろう。

・2009年5月のMMS予測: 2018年までの予測に目を転じると、メキシコ湾全体の油ガス生産は大水深を中心に展開。総じて、油は2018年までに確実に160万バレル/日のレベルを超える増産が期待。