1.1966年11月から1967年3月にかけて、逆イールドを検知したが、その後、景気後退には至らなかった。(1967年の景気後退の誤検知)
2.1990年7月から始まった景気後退の前に、逆イールドが発生しなかった。(1990年の景気後退の検出漏れ)
2.1990年7月から始まった景気後退の前に、逆イールドが発生しなかった。(1990年の景気後退の検出漏れ)
以下は、その懸案事項に対する考察です。
1.1967年の景気後退の誤検知
上のグラフは、米国の住宅投資の1959年からの推移です。(GDPに対する住宅投資の比率で表しています。)
青い線が全体の住宅投資で、赤い線が一戸建て住宅の分です。
拡大図は、以下のリンクから開けます。
Residential Investment Stalled
青い線が全体の住宅投資で、赤い線が一戸建て住宅の分です。
拡大図は、以下のリンクから開けます。
Residential Investment Stalled
住宅投資は、逆イールドと同様に景気後退の重要な先行指標です。
グラフを見てみると、1966年当時の住宅投資が大きく下落しており、景気後退入りを強く示唆していることが分かります。
グラフを見てみると、1966年当時の住宅投資が大きく下落しており、景気後退入りを強く示唆していることが分かります。
このように、イールドカーブだけでは無く、住宅投資などの複数の指標が、1966年当時、米国が景気後退に入る直前であることを示唆していました。
しかし、実際に、景気後退入りしなかった理由について、Calculated Risk氏は以下のように述べています。
Some readers will notice the sharp decline in 1966 and wonder why the economy didn't slide into a recession - the answer is the rapid build-up for the Vietnam war kept the economy out of recession (not the best antidote).
Some readers will notice the sharp decline in 1966 and wonder why the economy didn't slide into a recession - the answer is the rapid build-up for the Vietnam war kept the economy out of recession (not the best antidote).
すなわち、当時のベトナム戦争の急速な拡大によって、大規模な需要が追加されたために、景気後退入りが回避された、という訳です。
ベトナム(Wikipedia)の年表によると、1964年~1967年の状況は以下のとおりです。
# 1964 年:南ベトナムでグエン・カーン将軍によるクーデター(1月)、トンキン湾事件(8月 2日)
# 1965 年:アメリカ軍による北爆開始(2月 7日)、アメリカ海兵隊がダナンに上陸(3月)、韓国軍派遣(10月)
# 1966 年:北ベトナムに対するB-52による初空襲(4月)、初のクリスマス休戦(12月)
# 1967 年:南ベトナム解放民族戦線がダナン基地を攻撃(7月)、グエン・バン・チューが南ベトナム大統領に就任(9月)
# 1964 年:南ベトナムでグエン・カーン将軍によるクーデター(1月)、トンキン湾事件(8月 2日)
# 1965 年:アメリカ軍による北爆開始(2月 7日)、アメリカ海兵隊がダナンに上陸(3月)、韓国軍派遣(10月)
# 1966 年:北ベトナムに対するB-52による初空襲(4月)、初のクリスマス休戦(12月)
# 1967 年:南ベトナム解放民族戦線がダナン基地を攻撃(7月)、グエン・バン・チューが南ベトナム大統領に就任(9月)
1966年11月には、既に北爆が開始されており、もし、戦争の拡大で追加される軍需を想定すれば、逆イールドが検出されても、これを、ノイズと見なして、景気後退を誤って予想する事態を回避できた、と言えます。
2.1990年の景気後退の検出漏れ
前回に作成したイールドカーブでは、1990年の景気後退入りの前に逆イールドを検出できませんでした。
しかし、第20回 移動平均金利による逆イールドの抽出では、1989年8月9日~1989年10月18日の通算49日間で、逆イールドが検知されています。
しかし、第20回 移動平均金利による逆イールドの抽出では、1989年8月9日~1989年10月18日の通算49日間で、逆イールドが検知されています。
景気後退を予測して的中する確率:100%
景気後退を見逃す確率:0%
平均先行期間(既発債):5.8ヶ月
平均先行期間(変動利付き債):10.7ヶ月
景気後退を見逃す確率:0%
平均先行期間(既発債):5.8ヶ月
平均先行期間(変動利付き債):10.7ヶ月
●前提条件
1.3ヶ月債の金利として、1954年~1981年は、流通市場の既発債の金利を適用し、1982年以降は、変動利付き債の金利を適用する。
2.10年債は、全ての期間で、変動利付き債の金利を適用する。
3.金利は、90日移動平均を計算して、イールドカーブを求める。
4.戦争による軍需の拡大などで、大規模な需要追加が確実に予想される場合は、逆イールドが検出されても、これをノイズと見なす。
1.3ヶ月債の金利として、1954年~1981年は、流通市場の既発債の金利を適用し、1982年以降は、変動利付き債の金利を適用する。
2.10年債は、全ての期間で、変動利付き債の金利を適用する。
3.金利は、90日移動平均を計算して、イールドカーブを求める。
4.戦争による軍需の拡大などで、大規模な需要追加が確実に予想される場合は、逆イールドが検出されても、これをノイズと見なす。