サウジアラビアの原油生産に異変の兆し

米国政府エネルギー情報管理局(Energy Information Administration : EIA)の統計を調べると、2006年のサウジアラビア原油生産に異変が見られます。

2006年のサウジの平均の一日当たりの原油生産量(単位:1千バレル)と月末のWTI原油価格(単位:ドル/バレル)をリストアップすると、年の前半と後半に、二回の原油生産量の減少が見られます。

MONTH KB/D WTI
1月 9,400 61.46
2月 9,500 61.43
3月 9,350 62.22
4月 9,350 64.61
5月 9,200 66.71
6月 9,100 68.37
7月 9,300 71.66
8月 9,300 72.45
9月 9,000 71.16
10月 8,800 68.11
11月 8,800 64.66
12月 8,750 62.29

一回目の減少は、2月から6月にかけて見られ、950万バレルから910万バレルまで減少しています。7月と8月に、一時、930万バレルまで回復していますが、9月から12月にかけて、再度、減少しています。2006年の末には、875万バレルとなり年初から日量65万バレル、約7%の減少となっています。

原油生産量の減少の理由は不明ですが、年央の回復は、新しくHaradh 靴箸いμ?弔稼動して、日量30万バレルの原油生産が追加されたことが原因です。

この間の原油価格は、年初のバレル60ドル代前半から、7月後半の70ドル代後半まで急騰して、年末には再び60ドル代前半に戻っています。

これらのことから、サウジの原油生産の現状について以下のことが推測されます。
1.サウジは既存の油田からの産出量を年7%程度減少させている。
2.サウジは原油価格が60ドル代前半の間は増産しない。
3.原油価格が60ドル代後半から70ドルを超えると、サウジは新規の油田を稼動させて増産するが、その効果は、数ヶ月間の限定的なものである。

サウジの減産量は、そのまま、需要家への供給量の削減となっています。
=引用開始=
サウジ、アジア製油業者少なくとも1社に対し4月原油供給量を削減

[東京 12日 ロイター] サウジアラビアは、アジアの製油業者少なくとも1社に対し、4月の原油供給量を削減する方針を伝えた。業界筋が12日、明らかにした。
4月の供給量は、契約量を約10%下回るという。
同筋によると、アジアの顧客に対する3月の供給量は、契約量を7─8%下回った。
=引用終了=

他のデータからも現在のサウジの原油生産の厳しさが推察されます。
石油掘削用リグを製造している米国のBaker Hughes社の公開データからサウジの各年の1月時点での稼動中のリグ数(陸域と海域)をリストアップすると、2006年に大幅に増加していることが分かります。

Year Land Ocean Total
2003/1 28 3 31
2004/1 29 4 33
2005/1 29 5 34
2006/1 29 3 32
2007/1 44 6 50

このように、2003年から2006年の1月までの4年間、30代の前半だったサウジで稼動中のBaker Hughes社のリグ数が、2007年の1月までの一年間で、50台と急増しています。すなわち、2006年は掘削リグを1.7倍に増やしたにも関わらずに、生産量は増えず、8%減少しているのです。

この減少率が今後も続くと、単純計算では、10年後にサウジの生産量が半減し、原油価格の急騰や中東の政治状況の混乱に直結します。
今後もサウジの原油生産の動向を注意深く見る必要がありそうです。