新たに供給される石油のコスト

エネルギーアナリストのクリス・ネルダー氏が、非在来型の石油のコスト分析を行っています。

The cost of new oil supply


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上のチャートは、1980年からの世界の石油生産量を、油種別に表しています。
青色で示されている伝統的な原油は、2004年頃からほとんど増えておらず、それ以外の非在来型の石油生産が増えていることが分かります。

クリス・スクレボスキーの研究 によると、OPEC諸国の最新の油田の産出コストは、1バレル当たり、40から80ドルとなっており、カナダのタールサンドやベネズエラのオリノコ重質油は、70から90ドル、深海底の油田では、70から80ドルとなっています。
また、米国のタイトオイルの産出コストは、1バレル80ドルという複数の研究結果が発表されています。

しかし、これらは、産出コストのみであり、さらに、附加されるコストがあります。
アラブの春に対応するために、サウジは様々な財政支出を余儀なくされており、このコストを負担するためには、1バレル90から100ドルの価格が必要と言われています。

スクレボスキー氏は、新しい石油を生産するためには、80ドルから110ドルの油価が必要であると述べています。

また、深海底の油田掘削などが増えた結果、以下のグラフのように、油井の一本当たりの掘削コストも、急増しており、2000年からの10年弱で、5倍程度になっています。

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さらに、商業生産を始める前に、埋蔵量を確認するための試掘のコストも、以下のグラフのように、急増しています。

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2008年に試掘のコストが下がっているのは、リーマンショック後の景気後退によるもので、直近では、再び、上昇しているものと考えられます。

これらのコストの増加の中でも、石油開発企業が大きな利益を出しているのは、現時点では、コストの低い時代の油井からの生産比率が高いからです。
今後、高コストの油井が増えると、さらに、石油開発企業の利益を圧迫する事になります。

現時点で、非在来型の石油は、全体の3%に過ぎません。
IEAは、この比率が、2020年までに、6.5%に高まり、2035年には、10%に達すると予測しています。

スクレボスキー氏は、2014年までに、石油の開発コストの増加分を、原油価格の上昇で回収出来なくなるような、「経済的なピーク」に達すると予想しています。