商品循環 第56回 長期金利と商品循環のピークの発生条件

【直近の履歴】
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第54回 マネタリーベースの推移を比較する
第53回 1950年の金融政策を振り返る

今回は、これまでの長期金利と商品循環の関係についての分析結果を、一旦、まとめて、さらに、そこから、次回以降の展開につながる、商品循環のピークの発生条件を導き出します。

1.商品循環と長期金利の循環の関係

商品循環のピークと長期金利の循環の関係は、以下の三点にまとめられます。

(1)30年周期の商品循環のピーク・・・60年周期の循環構造を持つ長期金利のピークまたはボトムとほぼ同時期に表れる。

(2)長期金利のピーク・・・商品循環のピークが、約1年程度、長期金利のピークに先行する。

(3)長期金利のボトム・・・商品循環のピークは、数年、長期金利のボトムから遅れる。

2.長期金利のピークにおける商品価格高騰のメカニズム

長期金利のピークにおける商品価格高騰のメカニズムを、3つの観点(資金の流れ、前提条件、タイムラグ)からまとめると、以下のとおりです。

(1)資金の流れ
長期金利のピークにおいては、債券(金融資産)が売られた資金が、直接、商品(実物資産)に流れ込む。

(2)前提条件
債券売りと商品買いが直結している為、前提条件は無い。

(3)タイムラグ
商品循環がピークアウトして、商品価格が下落しても、消費者物価などのインフレ傾向は、しばらく、残るので、長期金利のピークアウトは、約1年程度、遅れる。

3.長期金利のボトムにおける商品価格高騰のメカニズム

長期金利のボトムにおける商品価格高騰のメカニズムを、3つの観点(資金の流れ、前提条件、タイムラグ)からまとめると、以下のとおりです。

(1)資金の流れ
長期金利のボトムにおいては、金利上昇の懸念が小さい為、景気刺激や財政ファイナンスを目的とした過激な金融緩和政策が行われる可能性が高い。

特に、中央銀行による国債の買い入れや引き受けによって、マネタリーベースが非連続的に拡大する傾向がある。

その結果、マネタリーベースの急拡大によって生じた過剰流動性の一部が商品に流れ込んで、商品価格が高騰する。

(2)前提条件
過激な金融緩和政策によるマネタリーベースの非連続的な拡大。

(3)タイムラグ
長期金利が低下してから、過激な金融緩和政策の実施、さらに、マネタリーベースの急拡大を経て、商品価格の高騰まで数年の期間を要する。

4.商品循環のピークの発生条件

以上の分析結果から、以下の商品循環のピークの発生条件が導き出されます。

(1)長期金利のピーク時

前提条件無しに、必ず、商品循環のピークが表れる。

(2)長期金利のボトム時

過激な金融緩和政策によるマネタリーベースの非連続的な拡大が発生した場合、商品循環のピークが表れる。逆に、過激な金融緩和政策が行われず、マネタリーベースの非連続的な拡大が発生しなかった場合、商品循環のピークは表れない。

次回から、この仮定を念頭に置いて、1920年以前の商品循環について、分析を進めたいと思います。