【直近の履歴】
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第36回 商品の強気相場における株式と商品のパフォーマンス比較(1)
今回から、複数回にわたって、商品循環と短期金利(政策金利)との関係を分析します。
今回は、代表的な短期金利をいくつか挙げて、その特徴を調べて、最も分析対象としてふさわしいものを選択してみます。
1.フェデラル・ファンドレート(FFレート)
米国の短期金利(政策金利)と言えば、通常、フェデラル・ファンドレート(FFレート)のことを意味します。
FFレートの操作は、FRBの金融政策の最も重要な手段と言えます。
FFレートは、定期的に約6週間ごと年8回開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で、誘導目標が決定されます。ただし、緊急を要する場合は、FOMCは、随時開催されます。
重要性と正確性から鑑みて、FFレートが、商品循環の比較対象として、最も、相応しいように思えますが、米国で、金利の自由化が進んで、FFレートが金融政策の主要ツールになったのは、1950年代と比較的に新しいために、数十年単位のヒストリカルな分析には、不向きであるという問題があります。
実際に、最も古いFFレートのデータは、1954年7月となっています。
St. Louis FED FF rate
2.ディスカウントレート(公定歩合)
ディスカウントレートとは、米国の公定歩合のことで、FRBがその会員銀行(連邦準備制度に属する銀行)に対して資金を、貸し出す際に課している金利です。
FFレートが、連邦公開市場委員会(FOMC)で決定されるのに対して、ディスカウントレートは、FRBが決定します。
最近の米国では、金利の自由化が進み、FRBが決める公定歩合よりも、連邦公開市場委員会(FOMC)が決めるFFレートの誘導目標の方が重要視されています。
また、ディスカウントレートのデータは、FFレートのように、詳細な月次のデータが残っていないため、細かいミクロ分析には適さないと言えます。
しかし、ディスカウントレートは、金融自由化以前からの1910年代からのデータが残っているため、ヒストリカルな商品循環との分析には、FFレートよりも、適していると言えます。
St. Louis FED Basic Discount Rate
3.米国債短期債金利(3ヶ月債)
政策金利ではありませんが、市場参加者が多く、流動性の高い3ヶ月債などの市場金利は、重要な短期金利の一つと言えます。
短期債金利は、FFレートなどの政策金利の影響を強く受けるため、FFレートと短期債金利が大きく乖離することは、無く、政策金利に対して従属的とも言えます。
しかし、短期債は、政府債務である性格上、米国の財政状況や10年国債などの長期金利の影響を受けることから、短期債金利が、FRBの政策金利の決定に影響を及ぼしているとも考えられます。
従って、やはり、重要な短期金利の一つであることは、間違い無いと思います。
データとしては、既発債の金利が、1954年1月から残されています。
3-Month Treasury Bill
また、米国債は研究対象として、様々なデータが蓄積されており、過去100年程度は遡る事は可能なので、分析し易いデータだと思います。
4.結論
以上の結果から、商品循環と比較する短期金利は、長期的な政策金利としてのディスカウントレートが最も適していると判断します。
FFレートは、1980年の商品循環のピークにおける、金融政策と商品価格やインフレとの関係を、ミクロ的に分析するために、使うことにします。
また、米国債の短期債金利は、今後、長期金利との関係性の分析の中で、検討することにします。
次回は、ディスカウントレートのデータを収集して、商品循環と比較分析することにします。