商品循環 第23回 1980年の投資パフォーマンス分析

【直近の履歴】
第22回 1980年の商品投資シミュレーション
第21回 商品と株価の価格変化率の傾向
第20回 1920年の株価を推定し、商品価格と比較する

1.前回の結果

前回、1980年の投資シミュレーションを行なった結果、以下のように、株式投資のパフォーマンスの方が、商品投資よりも大幅に上回りました。

【実質年率の比較】
商品投資(3.25%) < 株式投資(15.54%)

今回は、その理由を考えてみようと思います。

2.理由1・・・景気後退でショートポジションによる株式投資の利益が大きかった

この期間中に、景気後退が発生したことから、株式投資では、以下のように、ショートポジションとロングポジションを一回ずつ建て、各々で利益を上げることが出来ました。

ポジション→期間→実質年率→レバレッジ
ショート・・・1973年7月27日~1974年9月27日 51.63% 2倍
ロング・・・1974年9月27日~1980年12月19日 10.36% 1倍

特に、ショートポジションで大きな利益を上げたことが、株式投資のパフォーマンスを大きくした最大の理由と言えます。

3.理由2・・・PPIが商品投資の先行指標として有効に機能しなかった

PPIは、商品価格を別角度から見ているため、その集計・公表の期間を含めると、トレンド変化の検出が3~4ヶ月遅れます。

それが原因で、PPIが商品投資の先行指標として有効に機能しなかったことが、商品投資のパフォーマンスの低下につながりました。

4.理由3・・・手数料の差による商品投資のコスト高

以下のように、商品投資は、株式投資と比べて、手数料が割高になり、コストアップ要因となります。

CRB指数連動ETF・・・0.35%
S&P500指数連動ETF・・・0.09%
S&P500指数空売りETF・・・0.95%

5.理由4・・・株式投資における配当利益の存在

株式投資で、ロングポジション(ETF購入)を行った場合、配当分の収益が上積みされます。

S&P500指数連動ETF・・・1.6%

6.まとめ

1980年に限定した場合ですが、以下のように、結論付けられます。

(1)商品の強気相場であっても、イールドカーブなどを利用して景気循環(特に、景気後退)を予測できる場合は、株式投資を行った方がパフォーマンスが良い。

(2)PPIは、商品投資の先行指標として有効に機能しない場合がある。

次回は、2000年~2009年の商品の強気相場で、投資パフォーマンスを測定して、上記の結論が同じように当てはまるかどうかを調べてみます。