【直近の履歴】
第16回 商品循環のボトムを定義する
第15回 石油危機と商品循環の関係
第14回 1950年から1980年の原油価格
今回は、前回に定義した検出方法に則って、PPIのデータから商品循環のボトムを見つけてみます。
1.商品循環のボトムをPPIから検出する方法
前回、定義した商品循環のボトム検出方法を、以下のように、再定義しました。
(1)PPIの前年同月比の2年間の標準偏差を全データについて計算して価格変動の大きさを求める。
(2)標準偏差が2%未満の時期が1年間以上続いている期間を探し出す。
(3)上記の期間が終了し、三ヶ月以内に標準偏差が3%以上、増加した時点を探し出します。
2.PPI前年同月比の標準偏差を求める。
以前に抽出・加工したPPIのExcelデータに、以下の手順で標準偏差を求める計算式を追加します。
(1) 左から4番目の列に、3番目の列のPPI前年同月比の過去二年間の標準偏差を求める計算式を入力します。
(2) 例えば、48行目(1915年12月)の4列目には、=STDEV(C25:C48)と入力します。
(3) この結果、25行目(1914年1月) から48行目(1915年12月)のPPI前年同月比の標準偏差が計算されます。
(4) この計算式をコピーして、49行目(1916年1月)以降に貼り付けることによって、直近データまでの標準偏差を計算します。
以下は、この手順で作成・計算したPPIのデータのサンプルです。(1915年12月から半年分)
左から、年月、PPI、PPIの前年同月比、PPIの前年同月比の過去二年分の標準偏差となります。
1915-12-01 12.8 10.34% 3.30%
1916-01-01 13.3 12.71% 4.18%
1916-02-01 13.5 14.41% 5.03%
1916-03-01 13.9 17.80% 6.01%
1916-04-01 14.1 19.49% 6.92%
1916-05-01 14.2 19.33% 7.58%
このExcelデータは、SkyDriveに公開していますので、必要な方は、以下からダウンロードしてください。
PPIACO_STDEV
3.PPIデータの検証
上記のPPIデータから、商品循環のボトムの条件に合致するデータを探すと、上の条件には、完全には合致しませんが、以下のように候補が4箇所見つかります。
(1)1946年6月
ここは、1951年をピークとする商品循環の前方のボトムと考えられます。
1945-02-01 18.1 1.69% 1.94% <= 標準偏差が2%未満
1945-03-01 18.1 1.12% 1.78%
1945-04-01 18.2 1.68% 1.65%
(途中略)
1946-04-01 19.0 4.40% 1.01%
1946-05-01 19.1 4.37% 1.10%
1946-06-01 19.4 6.01% 1.36% <= 変化の小さい期間が、1年と5ヶ月間継続。
1946-07-01 21.5 17.49% 3.41% <= 1ヶ月後に3%超え。
1946-08-01 22.2 21.98% 5.17%
1946-09-01 21.4 18.23% 5.91% <= 3ヶ月間で、4.55%の増加
(2)1973年4月
ここは、1980年をピークとする商品循環の前方のボトムと考えられます。
1953-10-01 29.2 -1.02% 1.70% <= 標準偏差が2%未満
1953-11-01 29.1 -0.68% 1.23%
1953-12-01 29.2 0.34% 1.13%
1954-01-01 29.4 1.03% 1.29%
(途中略)
1972-12-01 41.1 6.48% 0.90%
1973-01-01 41.6 7.22% 1.07%
1973-02-01 42.4 8.16% 1.32%
1973-03-01 43.4 10.71% 1.84% <= 変化の小さい期間が、9年と6ヶ月間継続。
1973-04-01 43.6 10.94% 2.21%
1973-05-01 44.5 12.66% 2.69%
1973-06-01 45.5 14.61% 3.26% <= 3ヶ月間で、1.42%の増加 <= 3ヶ月後に3%超え。
1973-07-01 44.9 12.25% 3.47%
1973-08-01 47.5 18.45% 4.26% <= 5ヶ月間で、2.42%の増加
(3)1987年5月
ここは、ノイズと考えられます。商品循環の前回ピーク(1980年)から、10年以内にボトムに達することは無いので、条件を加えてノイズを排除することにします。
1983-09-01 102.0 2.00% 1.77% <= 標準偏差が2%未満
1983-10-01 102.2 2.00% 1.50%
1983-11-01 102.1 1.79% 1.22%
1983-12-01 102.3 1.79% 0.96%
(途中略)
1987-01-01 100.5 -2.62% 1.40%
1987-02-01 101.0 -0.69% 1.36%
1987-03-01 101.2 0.90% 1.46%
1987-04-01 101.9 2.31% 1.67%
1987-05-01 102.6 2.60% 1.87% <= 変化の小さい期間が、3年と5ヶ月間継続。
1987-06-01 103.0 3.10% 2.09%
1987-07-01 103.5 4.12% 2.37%
1987-08-01 103.8 4.53% 2.64% <= 3ヶ月間で、0.77%の増加
1987-09-01 103.7 4.33% 2.85%
1987-10-01 104.1 4.41% 3.04% <= 5ヶ月間で、1.17%の増加。 <= 5ヶ月後に3%超え。
(4)1999年10月
ここは、現在、ピークに向かっている商品循環の前方のボトムと考えられます。
1992-12-01 117.6 1.47% 1.92% <= 標準偏差が2%未満
1993-01-01 118.0 2.08% 1.83%
1993-02-01 118.4 2.07% 1.82%
1993-03-01 118.7 2.24% 1.84%
(途中略)
1999-05-01 124.7 -0.32% 1.01%
1999-06-01 125.2 0.32% 1.07%
1999-07-01 125.7 0.64% 1.16%
1999-08-01 126.9 2.17% 1.39%
1999-09-01 128.0 3.39% 1.71%
1999-10-01 127.7 2.98% 1.91% <= 変化の小さい期間が、6年と8ヶ月間継続。
1999-11-01 128.3 3.80% 2.16%
1999-12-01 127.8 4.07% 2.40%
2000-01-01 128.3 4.39% 2.56% <= 3ヶ月間で、0.65%の増加
2000-02-01 129.8 6.13% 2.85%
2000-03-01 130.8 6.69% 3.13% <= 5ヶ月間で、1.22%の増加 <= 5ヶ月後に3%超え。
2000-04-01 130.7 5.74% 3.30%
2000-05-01 131.6 5.53% 3.41%
2000-06-01 133.8 6.87% 3.57%
2000-07-01 133.7 6.36% 3.66%
2000-08-01 132.9 4.73% 3.62%
2000-09-01 134.7 5.23% 3.54%
4.商品指数との比較
上のように、データ分析で抽出した3箇所のボトムは、以下のとおりです。
1946年6月
1973年4月
1999年10月
このポイントをロイターの商品指数と比較すると、以下のように、過去3回の商品の弱気相場から強気相場への転換点とほぼ一致していることが分かります。
また、CRB指数のチャートを見ても、過去2回の商品の弱気相場から強気相場への転換点とほぼ一致していることが分かります。
従って、PPIの前年同月比の標準偏差から、商品循環のボトムをほぼ正確に検出することが出来ると言えます。
5.ボトム抽出条件の再定義
ここで、もう一度、商品循環のボトムをPPIから抽出する条件を整理して、定義し直します。
(1)PPIの前年同月比の2年間の標準偏差を全データについて計算して価格変動の大きさを求める。
(2)標準偏差が2%未満の時期が1年間以上続いている期間を探し出す。
(3)上記の期間が終了し、6ヶ月以内に標準偏差が3%を超えた時点を確認します。
(4) (3)の時点を確認した際に、最後に標準偏差が2%未満だった年月を、商品循環のボトムとします。
(5)ただし、前回の商品循環のピークから10年を経過していない場合は、この判定は対象外とします。
今回で、商品循環のピークとボトムの位置が決まったので、次回は、商品循環の周期等を計算してみようと思います。